2019年1月22日火曜日

第2051話 田園調布に泡が立つ! (その1)

かつて「田園調布に家が建つ!」のギャグで世に知られた、
星セント・ルイスという漫才コンビがいた。
ツー・ビートとの不仲説が伝わったりして
良きならぬ、悪しきライバル同士だったそうだが
お二人とも50代前半で亡くなってしまった。

てなこって大田区きって、いや、東京きっての高級住宅地、
田園調布に出没した昼下がり。
この日、訪れるのは
シャルキュトリーの「メッツゲライ ササキ」。
いわゆるデリカテッセンである。

自家製のソーセージ・ベーコン・ハムに加え、
ドイツ風、フランス風の惣菜類を店頭販売しつつ、
バーを備えたダイニング・スペースを合わせ持つ、
デンエンチョーフェーゼご用達のオサレな店舗だ。
フランス北東部に位置する美しい水の都、
ストラスブール辺りにありそうな店構えである。

本日のランチは
① ラザニア
② ヴルスト2種盛合せ
われわれはランチメニューを看過というか、
ほとんど無視してアラカルト・メニューを開いた。

ビールはドイツ産を初めとして
品揃え多彩ながら、みな小瓶。
よってサッポロ・エーデルピルスの生を所望した。
この銘柄の特徴はホップの苦みの際立ちである。
ステム付きのグラスで運ばれたが
必要以上に泡が多いじゃないか!
そう、田園調布に泡が立つ!

泡嫌いの身としては珍しく注文の際に
泡ナシ、あるいは泡少なめの要望を見送った。
バーカウンターでワインを飲む年配者や
背中合わせのテーブルに着いた中年カップルなど、
地元の常連サンに
「小うるさいヨソ者が何かエラそうに言ってるヨ」—
そんな嘲笑を避けたかったことが背中を引っ張った。

家を出る前にあらかじめ当店のメニューを
ある程度チェックして来たから
注文品の目途(めど)は立っている。
そう、田園調布に目途が立つ!

ハハ、いつまでたっても家は建たないしねェ。
ん? ちょいとシツコいってか? 
ハイ、スンマソン。
悪ノリはこれにて本日の打ち止めと致します。

=つづく=