JR総武線・浅草橋駅に近い「むつみ屋」。
昭和の空気漂う大衆的な酒場にいる。
お運びのオネエさんのほか、
カウンター内には店主夫妻。
おそらくお二人とも古希をすぎているだろう。
それでも元気に立ち働いておられる。
女将さんは今もチャーミング。
若い頃はかなりの美形であったことだろう。
J.C.のあと、すぐに常連と思しきオジさんが入店。
1席空けず、すぐ右隣りに着く。
そこが定席なのか、はたまた定席をJ.C.に奪われたのか、
その点ははっきりしない。
店の3名とそれぞれに親しく言葉を交わすところをみると、
常連も常連、大常連であることは明らかだ。
この御仁もビールの大瓶。
銘柄指定なくともサッポロ黒ラベルが供された。
彼が通したつまみはウインナー炒め。
ちょいと意表を衝かれたものの、
年配者にウインナー好きは意外と多い。
子どもの頃によく食べたか、
いつも魚肉ソーセージを食わされて
多少なりとも豚肉の入ったウンナーに
憧憬の思いを募らせたか、そのどちらかであろうヨ。
頭上に品書きがあるが
ほぼ垂直に見上げなければ目に入らない。
あまり入念に吟味すると首が疲れるので
ときどき視線を戻して首をグルッと回す。
ビールのアテのごま和えは
ほうれん草の湯切りが不十分なせいか少々水っぽい。
ずいぶん以前のことだから
何をつまんだのかまったく覚えちゃいないが
料理に秀でたものあれば、足繁く通ったことだろう。
そうならなかったのは印象が薄かったためだと思われる。
当店の名代は”さくらさし”である。
桜刺しはいわゆる馬刺し。
ふ~む、桜の散ったあとで桜刺しかァ。
こりゃまた小粋じゃないの。
まずはコイツに乗って、パカパカとまいりましょう。
注文の際にオネエさんから
「しょうがとニンニク、どちらにしましょう?」—
そう訊かれて
「両方というのはアリですか?」—
こう応えたのだった。
=つづく=
昭和の空気漂う大衆的な酒場にいる。
お運びのオネエさんのほか、
カウンター内には店主夫妻。
おそらくお二人とも古希をすぎているだろう。
それでも元気に立ち働いておられる。
女将さんは今もチャーミング。
若い頃はかなりの美形であったことだろう。
J.C.のあと、すぐに常連と思しきオジさんが入店。
1席空けず、すぐ右隣りに着く。
そこが定席なのか、はたまた定席をJ.C.に奪われたのか、
その点ははっきりしない。
店の3名とそれぞれに親しく言葉を交わすところをみると、
常連も常連、大常連であることは明らかだ。
この御仁もビールの大瓶。
銘柄指定なくともサッポロ黒ラベルが供された。
彼が通したつまみはウインナー炒め。
ちょいと意表を衝かれたものの、
年配者にウインナー好きは意外と多い。
子どもの頃によく食べたか、
いつも魚肉ソーセージを食わされて
多少なりとも豚肉の入ったウンナーに
憧憬の思いを募らせたか、そのどちらかであろうヨ。
頭上に品書きがあるが
ほぼ垂直に見上げなければ目に入らない。
あまり入念に吟味すると首が疲れるので
ときどき視線を戻して首をグルッと回す。
ビールのアテのごま和えは
ほうれん草の湯切りが不十分なせいか少々水っぽい。
ずいぶん以前のことだから
何をつまんだのかまったく覚えちゃいないが
料理に秀でたものあれば、足繁く通ったことだろう。
そうならなかったのは印象が薄かったためだと思われる。
当店の名代は”さくらさし”である。
桜刺しはいわゆる馬刺し。
ふ~む、桜の散ったあとで桜刺しかァ。
こりゃまた小粋じゃないの。
まずはコイツに乗って、パカパカとまいりましょう。
注文の際にオネエさんから
「しょうがとニンニク、どちらにしましょう?」—
そう訊かれて
「両方というのはアリですか?」—
こう応えたのだった。
=つづく=