2019年11月25日月曜日

第2270話 秋葉原を抜け出して (その2)

天皇・皇后両陛下のお膝元、千代田区は
神保町と水道橋のあいだで
カフェと言うか、ダイニングバーと呼ぼうか
「スイング」の店先にいた。
正式名称は「Cafe & Beer SWING 白山通り店」

名物のエルバグラタンはマカロニではなく、
スパゲッティ・ミートソースをオーヴンで焼いたもの。
エルバはイタリア語で
”草”を意味するとの但し書きがあった。

生ビールは黒ラベルだし、此処にしようか—。
いや、待て、待て、時刻はすでに14時過ぎ。
こんな時間に重いものを食べちゃいかん。
思いを残しながら、なおも道なりに歩く。

JR水道橋駅の手前を左折してみた。
すると今度は「SWING 水道橋店」が現れた。
何だって同じ店が2軒も至近距離にあるんだヨ。
これは客入りに恵まれ、1軒じゃさばききれず、
強気になった経営者が
攻めの商法を貫いた結果にほかならない。

通り過ぎようとしたとき、
目に入ったのが1951年創業の文字。
ん? おっと、同い年じゃないか—。
そろそろガス欠の兆候も表れているし、
これも多生の縁、そう思い直して
ステップド・イントゥー・ザ・ショップ。

黒ラベルの中ジョッキを通しながら
接客係の若い女性に訊いたところによれば、
元々は江東区・亀戸で創業したらしい。
銀座でもあるまいし、昭和26年に
こんなシャレた店が亀戸にあったとは考えにくい。
何かベツの食べもの商売だったのだろう。

メニューをめくると、なかなか多彩だ。
ハム・ソーセージの品揃え豊富にして
各種アヒージョ、舌平目のムニエル、
スペアリブに牛すじワイン煮、
はては伊勢うどんまであったヨ。

重いのを避けて択んだムール貝の白ワイン蒸し、
いわゆるムール・マリニエールは
思いのほか、けっこうな量だ。
ニンニク・セロリ・マッシュルームが散見されるなか、
ザッと数えてみたら13個、1ダース以上もある。
すかさずバゲットと、ついでに生のお替わりを—。

貝の山登ること半ばでビールを飲み干し、
グラスの白に代えて知多のハイボール。
これがムールにピタリと寄り添い、正しい選択だった。
40分ほどの滞空で会計は2500円。
ムールの貝殻を数珠つなぎに1列1本にまとめ上げると、
皿を下げにきた先刻の娘が目をまあるくしてましたとサ。

「SWING 水道橋店」
 東京都千代田区神田三崎町2-9-5
 03-3515-7280