2019年11月22日金曜日

第2269話 秋葉原を抜け出して (その1)

 一に新宿、二に渋谷、三、四がなくて五に秋葉原。
これが東京のマイ・ワーストスリー・タウン。
先日、告白したばかりだが、なぜかその秋葉原へ。
アキバに来るのはPC関連以外にまずない。
早々に用を済ませ、せっかくだから昼めしでもと、
好きでもないエリアを物色してみた。

ないネ、ない、ない、気に染まる店がまったくない。
中には行列のできたところもあったが
エッ? 何だってここに並ぶの?
疑問符の連発と相成った。
要するに、この街は需給のバランスがぶっ壊れ。
客は口に入れば按摩の笛でもよくなって
店は給食を給餌のレベルにまで落とす。
こりゃ、えらいこっちゃ、早いとこ脱出せねば―。

左手に「肉の万世」を見ながら
万世橋を南に渡って神田須田町。
老舗が連なる旧連雀町は日曜につき、揃ってクローズド。
ドンマイ、ドンマイ、ひたすら靖国通りを西へ直進、
淡路町、小川町を経て駿河台下にやって来た。
神田古本まつりとやらで
屋台がセーヌ河畔のブキニストさながら。
近くの公園では神田カレーグランプリときたもんだ。

すずらん通りの中華かロシアンに決めかかったが
いや、ちょいと待て・・・とある1軒に思いが至った。
神保町の交差点を水道橋に向かい、北へ。

「海南鶏飯」の階下、入口でメニューに見入る。
狙いは主力のハイナネーズ・チキンライスではなく、
マレー風カレー&ロティ・プラタ。
ロティ・プラタは全粒粉使用の無発酵パンで
シンガポール時代はマイ・ブレックファストの定番だった。
強力粉を発酵させたナンよりすっと好きだ。

このとき、脇をすり抜けてドヤドヤと
狭い階段を上がったのは十数人の若い男女。
アチャ~、このあとに続いたら
どれだけ待たされるか知れたものではない。
美のカリスマだか何だか存ぜぬが
愚相の隣りで花見に興じたタレントに倣えば
「どんだけ~」-てなことになる。

懐かしの味はスッパリあきらめた。
まったく今日はツかないねェ。
あっちフラフラ、こっちフラフラ、
かれこれ1時間以上もスイングしてるぜ。
そのとき目の前に現れたのは
紛うことなき、その「スイング」だった。

=つづく=