2019年12月16日月曜日

第2285話 よみせ通りでカクテルを

ここ数年、欧米の観光客があふれる、
谷中銀座とT字路で交差する、よみせ通り。
小ジャレた喫茶店を見とめたのは
2年ほど前だったろうか—。
地元なのに喫茶の前はどんな店だったか思い出せない。
喫茶店とはほとんど無縁の身だったが
ここ数ヶ月、違った道を歩んでいる。
そうして入店してみた「ニト」だった。

リストを開いたら見慣れない珍品の数々。
北欧フィンランドと何かつながりがある様子で
ドリンクにも軽食にも
ユニークなアイテムがアップされていた。

コーヒーは脇に置いといて
”緑の触覚”なるカクテルを所望する。
ジン・抹茶・グレープフルーツジュースのカクテルだが
酒類はジンだけだから厳密にはカクテルとはいえず、
ミックスドリンクと呼ぶのが正しい。
まっ、ウルサいことは放っといてカクテルとしておこう。

何でもこの飲みもの、フィンランドのバンド、
アラマーイルマン・ヴァラサットの正式ドリンク。
バンドに正式ドリンクなんて意味がサッパリ判らんが
味わってみると、なかなかにイケる。
緑の色合いが視覚にも訴える。
しかし、”緑の触覚”なるネーミングはどうだろう?
つい、キリギリスや殿さまバッタを連想してしまう。

カリャラン・ピーラッカなる、
パンだかクラッカーだかハッキリしないのは
京都のフィンランドパン専門店「キートス」の製品。
お願いはしたものの、少量に過ぎて存在感薄く、
味わいもパッとしなかった。
まあ、ハナシの種だネ、コレは—。

アッという間に飲み食いを完了したJ.C.。
やはりサテンは手持ち無沙汰だ。
植木等と藤山寛美を比較研究した書物を
本棚からピックしてパ~ラパラ。

席数の少ない小体なカフェはすでに満卓。
次々に現れる後客はそのままきびすを返す。
こりゃ、長居は無用にして店にも迷惑だ。
早々に退店し、オモテのよみせ通りへ。

ここで店先の可愛い看板に気づいた。
白地に黒く二羽のウサギが描かれている。
おっと、そうか、
「ニト」は「二兎」のことだったんだねェ。

「ニト」
 東京都文京区千駄木3-42-13
 電話:ナシ