2020年1月3日金曜日

第2299話 年の瀬の柴又 (その3)

柴又街道の終着、金町にやって来た。
焼きとん「ブウちゃん」の暖簾が出されるやいなや、
並んでいた7~8人の客とともになだれ込む。
5年ほど前、短期のミッションのため、
この町に通い、帰り道に何度か訪れたものの、
紹介を何となくためらい、今回が初披露になる。
地元で有名ながら一般には隠れた佳店といってよい。

当時は駅から少々の距離があったが
京成金町駅ホームの線路脇に移り、
今回は移転後初めての訪問だ。

ドライの中ジョッキと酎ハイ(通称ボール)で
Fチャンと本日二度目の乾杯。
わさびの茎漬け、インゲン胡麻和えを所望した。
わさ茎は”あれば頼む”の必注品。
洋酒はさて置き、ビール・日本酒・焼酎と、
和モノなら何にでもピタリ寄り添う。
わさびフリークの身にはまさに打ってつけ。

焼きとんはカシラを塩、
アブラ・シロ・レバ・フワをタレでお願い。
う~ん、懐かしいなァ、5年ぶりではさもありなん。
切り替えたボールが、またあの頃を思い出させる。

隣りの中年カップルが珍しいものを飲んでいた。
壁のメニューを分析の結果、どうやらキンコウジハイ。
キンコウジ(金柑子)は果汁豊富な柑橘でハッサクの仲間。
われわれも隣人に倣うことにした。
う~ん、さわやかだけど、ちと酸味が弱いかな。

追加の焼きモノはコブクロ・フワナンコツをタレで―。
フワは肺臓、フワナンコツはその回りの器官。
ノドナンコツより歯にやさしい。
会計は二人で五千円弱、満足である。

続いては京成金町駅をはさみ、
線路の向こう側にある「金町製麺」へ
ラーメンのスープに珍しいキジ出汁を使う店だが
新鮮な魚介の取り揃えも秀逸と聞いていた。

サントリー山崎のハイボールで三度目の乾杯。
出自を明確に謳った刺身は
新潟の甲イカ、北海道のツブ貝。
ともに鮮度が高く、コリコリと歯に快い。
あいや、コイツはラーメン店のレベルじゃないゾ。

量少なめで、そのぶん価格を抑えているのも好印象。
ハイボールを山崎から白州にスイッチし、
長崎産ヒラマサと青森産スルメイカ肝醤油掛けを―。
いやはや何をいただいても美味い。

J.C.は白州のお替わり、Fチャンは吟醸酒の冷たいの。
一緒に広島産かきの玉子あんかけを追加した。
少量づつとはいえ、チョコチョコつまんだため、
キジ出汁ラーメンまではたどりつけない。
お勘定は6400円と、再び満足感いっぱいの金町の夜。

このへんでやめときゃいいのに
JR常磐線に乗り込んだオッサン二人は
荒川区のスナックを目指したのでした。
バカだネまったく、イヤんなっちゃうヨ。
おいちゃんの嘆き節が聞こえ来るようでありました。

=おしまい=

「ブウちゃん」
 東京都葛飾区金町5-35-5
 03-3600-5895

「金町製麺」
 東京都葛飾区金町6-2-1
 03-5876-5736