2020年6月15日月曜日

第2415話 本格中華と町中華 (その1)

現在、東京の地下を走っている路線は
東京メトロが9、都営地下鉄は4、計13線。
このうちJ.C.の利用頻度が少ないのは
副都心線、有楽町線、大江戸線(都営)の順となる。

この日は住まいの最寄りから千代田線に乗り、
新御茶ノ水、池袋と2回乗り換えて
あまり利用せぬ有楽町線で練馬区・平和台に到着。
土地勘のあるエリアながら
駅前の環八通りがやかましい、殺風景な土地柄だ。

駅そばの中国料理店「桂林」を訪れたのは正午過ぎ。
桂林は広東省に隣接していながら
耳慣れない広西チワン族自治区にある景勝地。
雨後の竹の子みたいにカルストがニョキニョキ生えて
トルコのカッパドキアとパムッカレを合わせたような場所。
まだ行ったことがないけれど、
国内の競輪場すら足を踏み入れてないから
中華人民共和国の桂林はかなり敷居が高いや。

ビルの2階に上がると、隣りは大衆焼肉の「安楽亭」。
階段で目の前を先行していた家族連れは
そちらに吸い込まれていった。

「いらっしゃいませ~!」―
オネバさんのコーラスに応え、右手人差し指を立てる。
案内されたのは椅子が8脚ほど取り囲む円卓。
クルクル回るラウンド付きだ。
此処は町中華ではない本格派に相違ない。
「ご相席になるかもしれませんが、よろしくお願いします」
「ああ、いいですヨ」

お茶の冷・温を訊かれる。
どうせビールだからお茶は不要なれど、
一応、冷たいのをお願いしたらジャスミン茶だった。
生ビールはキリンのラガーとブラウマイスターの二択。
瓶までキリン一番搾りときて、完全にキリン一色。
文句を言ったらキリンがないから、消去法で中瓶を―。

そうしておいて冷菜を一皿、お願いしよう。
当店には
本日の三種前菜1名様盛り(480円+税)
というのがあり、
その日は、合鴨のカルパッチョ・干し豆腐の高菜和え・
海老のガーリックソースのトリオだった。

これでいいやと思いつつも不意に気が変わり、
”店長おススメ”なる、干し豆腐の干し貝柱和えを通す。
同じ干し豆腐でも、三種前菜盛りにあった高菜より、
干し貝柱に魅力を感じたのだった。

=つづく=