永井荷風の「濹東綺譚]に目を通したので
その舞台に行きたくなり、
日暮里駅前から乗った亀戸行きのバス。
荷風も通った向島百花園前で降りた。
散策は後回しにしてまずは昼めし。
冷製パスタのシーズンが始まったというので
イタリアン「トムトム」へ。
ん? シャッターが閉じてるヨ。
ケータリングのため、今日は休むんだってサ。
かつてよく出没した町につき、代替には困らない。
荷風ゆかりのいろは通り。
「興華楼」が休業だか閉業で
向かいの「宝来飯店」へ。
平成元年(1889)創業の老舗だ。
この道筋もシャッター・ストリートの気配ひしひし。
寂しさよりも侘しさを感じてしまう。
冷たいパスタを狙っていたため、
此処でも冷たい中華パスタを通す。
ご存じ冷やし中華である。
ドライを飲みながら待つこと5分。
平たいお皿にヒタヒタと、
醤油ベースの甘辛いタレ、これがいいんだ。
中国にはまずない日本の冷やし中華である。
麺上を彩るのは
焼き豚・錦糸玉子・くらげ・きゅうり、
そして硬さを残した春雨だった。
何よりも特徴的なのはこの麺。
極細の上にもう一つ、
”極”の字を重ねたいほどの細さ。
長いこと生きてきたが
人生最細の麺が目の前に横たわっていた。
揖保乃糸より細いんだ。
酢を振ってみたり、
辣油を垂らしたりしながら完食。
中瓶をお替わりし、千円札2枚のお支払い。
お運びさんに
「興華楼は閉めちゃったんですか?」
「いいえ、今日は外壁の塗り直しみたいで
明日は開いていると思います」
「そうか、良かった」
「だいじょうぶです、ダイジョブですっ!」
オネエさんに励まされた気分。
道路拡張のために
ずいぶん様子が変わった鐘ヶ淵通りを往く。
東武伊勢崎線に乗り、
北千住の行きつけで白身の刺身を肴に
ボール(下町風焼酎ハイボール)を
2、3杯やっつけて帰るとしましょう。
「宝来飯店」
東京都墨田区墨田3-8-15
03-3617-9999