2024年8月16日金曜日

第3603話 昭和喫茶で キリマンジャロ

気温36度の旧東海道をテクテク。
歩いてるバカなど見かけることもない。
と思いきや、黒い日傘をさして
ヨロヨロよろける爺さんとすれ違った。
おい、おい、爺ちゃん、危険な暑さだヨ。
言葉を飲み込んで、さらに前へ、前へ。

ほどなく差し掛かる日本そば「吉田家」。
何度か利用したがずいぶん値上げされた。
いくら大車海老使用とはいえ、
天せいろが4300円と来たもんだ。
インバウンドならともかく、
フツーの日本人にゃ、まず手が出まい。

立会川を立会川橋で渡り、
11年前に1度だけおジャマした、
「鳥勝」の店先にやって来た。
のみとも・半チャンと彼の GF、
大森芸者のしのぶチャン行きつけの店で
2人にすすめられ、訪れたのだ。
開店の16時半までだいぶあってスルー。

旧東海道に戻った。
しばらく往くと再び立会川に架かる浜川橋。
またの名を涙橋という。
鈴ヶ森刑場に送られる罪人とその親族が
互いに涙を流す別れの橋である。

なおも直進、鈴ヶ森刑場跡に到達。
八百屋お七が生きながらにして火炙り、
丸橋忠也も生きながらにして磔刑、
それぞれ処せられた場所が此処である。

JR大森駅にやって来た。
すでに汗だくだくで牛丼のつゆだく状態だ。
気を取り直し、本日二つ目の目当ては
昭和レトロの喫茶店「ルアン」。
コーヒーに縁遠いJ.C.ながら
キリマンジャロがぜひとも飲みたかった。
理由は後述するとしてストレートでお願い。

なるほど10分は掛かったかな?
並みのブレンドとはワケが違うネ。
ふむ・・・酸味は強いが薄っぺらさはなく、
コクに奥行きと深みがあって一体感を伴う。
これを”三位” ならぬ、
”酸味" 一体と云わずして何と云う。

実はこのキリマンジャロ、
数日前にロンドン時代の夢をみたんだ。
あれは1974年だからきっちり半世紀前。
読んでいた文芸春秋のお笑いコラムに
或る夫婦の会話。

「隣りのご夫婦、こんな夜中に
 コーヒー淹れて何するのかしら?」
「ギリマンじゃろ」

クックック、苦笑をこらえることが
できませんでした。
おあとがよろしいようでー。

「珈琲亭 ルアン」
 東京都大田区大森北36-2
 03-3761-6077