2026年7月4日土曜日

第4114話 歓びアーカイブ 第26回

浅草のスーパーで
珍しいハマグリを見つけた話です。

2016年7月28日木曜日

第1413話 クラムだって恋をする (その6)

平日の明るい時間だというのに
浅草のランドマーク、
「神谷バー」は大盛況だった。
この店の2階は
「レストラン神谷」が正式名。
カジュアルな1階が「神谷バー」で
食券制を採用している。

J.C.は煙草のけむりと騒音にまみれた、
(当時の1階は喫煙可)
1階を利用することはほとんどない。
「神谷バー」といったら
イコール2階なのだ。
中ジョッキを飲みながら
着信したメールをチェックする。

つまみは欲しくなく頼まなかった。
夕暮れに過ぎゆく時間の流れは
各駅停車もいいところ、
ゆるゆるのゆるである。
でも好きだなァ、このひととき。
お替わりの電氣ブランを
あおって階下に降りた。

河岸を替える前にふと思い出す。
わさびを1本買っておかねば・・・
このことであった。
自宅の冷蔵庫の生わさびが
チビでしまって要調達。
購入するのはいつも
浅草のスーパーマーケットだ。
「神谷バー」から
その「オオゼキ」へは徒歩2分。
目の前の雷門通りを渡った。

真っ先にわさびを選りすぐり、
最良の1本をバスケットに投じたら
目的を果たした安堵感を抱きつつ、
ザッと店内をパトロール。
というより徘徊だネ、これは―。

鮮魚コーナーに目を凝らしたときである。
ん? おや?
視線を奪う物体に遭遇したのであった。
青いネットに包まれて
ふむ、青ネットねェ。
赤ネットなら甘栗か蜜柑だが
どう見ても貝である。
それも二枚貝だということは遠目にも判る。
いやはや二枚貝と二枚目(?)のご対面だ。

パックを手にとっていささか驚いた。
ラベルには千葉産ホンビノスと
明記されているものの、
どこか本邦のハマグリを
想起させる貝殻模様なのだ。
ホンビノスはアメリカ東海岸から
タンカーのバラスト水に
混入して東京湾にやって来た外来種。

15粒ほど入って税抜き399円、
格安と言わねばならない。
ユニークな模様と廉価な値付け、
わさびの隣りに放り込み、レジに向かう。

帰宅後、ネットを破って砂抜きである。
真ん中2粒のガラをご覧くだされ
周りを取り囲むのは紛れもなくホンビノス。
しかるにこの2粒は違いますゾ。
これは日本のハマグリとのハーフなのだ。
東京湾の底で交わされた国際結婚。
国を超え、言葉を超えて
そう、クラムだって恋をするんです。

=おしまい=

「神谷バー」
 東京都台東区浅草1-1-1
 03-3841-5400

「オオゼキ」
 東京都台東区雷門2-15-1
   03-5830-0731

=本日追記=
あれ以来、貝の混血児には
一度も出逢っておりません。