作日のつづきです。
そしてフランス料理店と
ステーキハウスへの高すぎる評価は
もはや異常である。
どちらを取っても
パリと東京に遠く及ばないのにー。
しかしこればかりは
アメリカ人の舌の問題ではなく、
心の問題というところが面白い。
フランスに対するコンプレックスと
アメリカへの愛国思想が
同居しているのだ。
ダウ9000ドル(安かったなァ)を
クリアして世界経済を牛耳り、
得意満面のアメリカも
フランスには弱いのである。
かくして、とある日、
ひとつ、自分の舌を
信じてみようという気になった。
いくらなんでも2000軒は
一個人の力では及ばないから
優良店を225軒に絞り込む。
この数字に特別の意味はなく、
ウォール街のマネー・ブローカー、
という職業柄、目の前の
モニター・スクリーンに
たまたま映ったシカゴ先物市場、
日経225のページから
そのまま拝借しただけでした。
ということですが
あれから早や30年近く。
こと仔牛に関して世の中は
まったく変わっていない。
J.C.の嘆きは今も続いている。
まっ、嘆いていても仕方がない。
話を前に進めましょう。
そう言えば、ただ一度、
こういうことがあった。
去年の今頃、紹介した、
麻布十番の「ヴィーノ・ヒラタ」。
そのワンフロア上にあるのが
兄貴分の「クッチーナ・ヒラタ」。
仔牛料理があるというので
当店のマダムに訊いてみた。
「仔牛のパイラルド出来ますか?」
彼女、胸を叩いて
「ハイ、出来ますとも!」
思いがけない歓びだった。
そして、とても美味しかった。
はるか昔、2001年。
四半世紀も前だけどネ。
さて、高田馬場「文流」。
冷たいコーンポタージュに満足し、
仔牛のソテーには
若干の不満を残すところへ
オネエさんがやって来た。
「カキがたった今、届きましたが
いかが致しましょうか?」
「うん、そうだネ、
どうしようかなァ?」
仔牛のあとのカキでは
順序が後先になるが
「それじゃ、1個だけいただくネ。
真ガキかな? 岩ガキかな?」
彼女、首を傾げる。
「厨房で訊いて来てくれる?
真ガキなら欲しいけど
岩ガキなら要らないっ!」
=つづく=