2012年2月7日火曜日

第246話 酢がきとかき酢 (その3)

どちらも美味なる酢がきとかき酢だが
肝心なのは甘酢の準備だ。
煮立ててから冷ます時間が必要なので
かきを洗浄する前に作っておいたほうがよい。

用意するのは、純米酢・水・砂糖・塩・日本酒。
分量は適当ながら日本酒は少なめでけっこう。
なあ~に、味見をしてみて
酸味が足りなきゃ酢を、甘みが足りなきゃ砂糖を、
あとから加えりゃいいんだから神経質になることはない。
以上をひと煮立ちさせ、そのまま冷まし、
粗熱が取れたら冷蔵庫でしばし冷やす。

洗浄を終え水分を取り去ったかきを小鉢に移し、
上からひたひたに甘酢を張れば、かき酢の出来上がり。
マイルドな酸味を好む向きは
かきを甘酢にくぐらせるだけでOK。

よく、割烹や居酒屋で殻付きのかきに
もみじおろしと小ねぎとポン酢を掛けたのに出食わすが
ありゃ旨くもなんともございませぬな。
まるで馬鹿の一つ覚えの典型例、
創意工夫がないところに進歩は生まれない。

次に酢がき。
J.C.はこちらをより好む。
上記の要領で甘酢ひたひたのかき酢を作り、
数十分、数時間、あるいは半日、はたまた1日、いえいえ2日、
好みの塩梅に〆ると、かき酢が酢がきに昇華する。
〆具合浅め、深め、ともにそれなりのよさがあり、味わい深い。

今の時期なら甘酢に柚子皮を数片泳がすのがオススメ。
見た目美しく、香りかぐわしく、よくぞ日本に生まれけり、である。
しかもかきのあとに残った柚子酢が燗酒のアテにピッタリなのだ。
酢と酒の盃を二つ仲良く並べ、
こっちチビチビ、あっちチビチビ、こりゃたまりやせんぜ。

男やもめなら、かきを300g も買ってくりゃ、
丸3日は楽しめようというものだ。
「3日も続けて食ってられるかい!」―そりゃそうですわな。
当方まったく意に介さずとも、フツーの人はそうですわな。

かき酢に100g、酢がきに100g、要したとしてもまだ100g。
残ったかきの使い道として推奨したいのは、かきの深川めし風。
白・赤・八丁、好みの味噌と日本酒で
かきと長ねぎをサッと煮立て、ごはんに掛けるブッカケ飯だ。
上から一味・七色・粉山椒、自由に振ればなおよろし。

深川めしは下町の漁師のまかないで主役はあさりのむき身。
あさりの代役を務めてもらって、かきの深川めしというのは
何ともおざなりなネーミングじゃないか。
産地にちなみ、広島めし、松島めしと呼びたいところだが
それじゃあ、ちょいと芸がなさすぎる。
ここは一番、瀬戸内めし、みちのくめしと
小粋な名前をプレゼントしてやりたいものですな。

=おしまい=