2012年2月2日木曜日

第243話 渋谷に疲れて神楽坂 (その2)

渋谷は「富士屋本店」の地下と地上でハシゴしたあと、
向かったのは道玄坂の「京町恋しぐれ 渋谷店」。
ビルの4Fにある大型店舗は新宿にも姉妹店がある。

経営母体はシークレット・テーブル。
傘下には「今井屋本店」、「キリストン・カフェ」などなど。
「今井屋本店」は良質の焼き鳥を供するし、
「キリストン・カフェ」はアフターディナーに最適だ。
前者は料理、後者は雰囲気が気に入っている。

「京町恋しぐれ」は料理よりも内装と雰囲気の店。
町屋和食を謳うだけあり、幕末の京都を偲ばせる。
三条大橋を模した木橋が架かっているかと思うと、
おみくじを引ける神社まであるのだから半端ではない。

店内は大小織り交ぜてほとんど個室。
ホテルのルームよろしく入口にはナンバープレートが。
ひと月ほど前、取材で訪れたから様子は熟知しており、
二人連れがくつろげるベストスポットを押さえておいた。
三条大橋を窓から臨む、小ぢんまりとした部屋である。

この夜は友人のO.K.に店舗の設いを見せるのが目的。
よって飲み食いに軸足を置いていたのではない。
だからこそ行きがけに2軒も寄ってきたのだ。
しかも、このあとどこかに流れるに決まっている。

飲んだのは瓶ビール、そしてフレッシュライムサワー。
生のライムがあるとつい頼みたくなる。
相方も同じものをフォローしていたが
あんこサワーなどとおどろおどろしいのを試飲してもいた。

お願いしたのは馬刺しと岩手鶏の柚子塩蒸し。
主力商品の蒸篭蒸しは2人前からで
もうほかに何かを食べる気がしない。
主力をミニマム・2ポーションに設定すれば、
売上に寄与するだろうな。

快適な空間で会話もはずみ、ひとしきりして夜の街へ。
若者中心に人通りはいまだ絶えない。
若くないわれらはどこかへ移動したくなった。
箱の中に収まっているぶんにはよいが
箱から出てくるとすぐ疲れるのが渋谷だ。

目指したのは神楽坂である。
浅い時間なら第一感は「S寿司」のところ、
すでに日付が変わりそうな深い夜。
神楽坂の坂から一本入って見つけたのは
スペインバルの「Asador El Buey」だ。
「アサドール・エル・ブエイ」と発音するのだが
何がうれしくてこんな覚えにくい店名にするんだかァ。

バルなのにワインはやめて生ビール。
ノドをうるおしオリーヴをつまみながら
トルティーヤと牛もつグラタンを注文した。
牛もつは常々、下町で良品を口にしているから
この程度のレベルでは満足できない。
されど存在感じゅうぶんのトルティーヤは花マルだった。

店名はそれぞれ異なるが近所の本多横丁を皮切りに
次は銀座のはずれ、そしてこの場所と3軒連続の開業。
ふ~ん、けっこう儲かってるんだねェ。
スペインバルのブームは去ったと思いきや、
まだまだ生き残りの道はちゃあんとあるようで。

「京町恋しぐれ 渋谷店」
 東京都渋谷区道玄坂2-29-5 ザ・プライム4F
 03-3463-8866

「Asador El Buey」
 東京都新宿区神楽坂3-4
 03-3266-0229