「基寿司」の小上がり風座敷で宴もたけなわ。
白ワインを飲みきってお次は赤の番だ。
ピノ・ノワール、カベルネ・ソーヴィニョン、
モンテプルチアーノ、ジンファンデルと
セパージュが入り乱れ、
花菱アチャコじゃないがムチャクチャでござりますがな。
そこへにぎりの三の皿が運ばれた。
陣容はすみいか・大とろ・赤貝ヒモ巻き。
おっと、大とろを目の前にしてメタボOLの鼻息が荒い。
本まぐろの腹の脂身が遅からず本人の下腹部に
まとわりつくことをまるで自覚していない。
傍で見ていて哀れといえば哀れだ。
トドメの四の皿は小肌・いくら巻き・わさび巻き。
小肌とわさび巻きは親方がアンコールに応えてくれたもの。
江戸前鮨の原点ともいうべきこの2点の前では
竜宮城の鯛や平目の舞踊りもかすんでしまう。
もちろんまぐろとて同じこと。
鮨の王者は一にも二にも小肌をおいてない。
せっかく節分の夜にやって来たのだ、
オカミさんの許しを得て豆まきが始まった。
豆だのお面だの一式用意してきたのは幹事のM原クン。
敵役(かたきやく)の鬼に迫力がないから
盛上がり度もそこそこながら、みな大いに楽しんだ。
豆まきなんて何年ぶりかな?
ほとんど忘却の彼方だぞ!
散らかしっ放しの「基寿司」をあとにして二次会に流れた。
J.C.が目星をつけておいたのは
浅草ではきわめて珍しい24時間営業の「大勝館」。
知る人ぞ知る六区の同名劇場内の食堂だったが
本館の建替えに伴い、ひさご通りの脇に移動してきた。
もっとも建替えのほうは遅々として進まぬらしい。
この店では同名のよしみか、
かの有名な池袋「大勝軒」の中華そばを提供している。
経緯は存ぜぬが何かのハズミでこうなったものだろう。
夜も更けて気持ちよく酔いが回り、
さすがに中華そばに食指をのばすことはなかったものの、
キンピラをつまみに飲み直しだ。
おぼろげに思い出せば、ヤケに煮汁の多いキンピラだった。
ヒタヒタの汁にごぼうがシャブシャブしていたもの。
ホンの1時間足らずで二次会は終宴。
ここで帰ればよいものを
悪魔の声が耳元でささやいた。
誰かと思えば先刻の鬼である。
鬼役はイマイチだったが悪魔役は堂に入っているじゃん。
やれやれ。
そうして二人で出向いたのは二人共通の行きつけ店。
そう、田原町の隠れ家スナックである。
飲んで歌って疲れ果て、時計を見たら東京午前二時半。
もうちょっと騒いでいたいという悪魔をあとに残し、
またしても真夜中の帰宅となりましたとサ。
=おしまい=
「基寿司」
東京都台東区浅草4-37-8
03-3874-1751
「大勝館」
東京都台東区浅草2-17-3
03-3843-6084