昭和2年開業の和食居酒屋「三岩」をあとにして
すし屋横丁からフラワーロードを抜け、ホッピー・ストリートへ。
「三岩」では瓶ビールで始め、デンキブラン、そして燗酒という流れ。
すでに冷たい生ビールが飲みたくなっていた。
そこで向かったのが「正ちゃん」だ。
ところがギッチョン、満席で身の置きどころがないときた。
すまなそうに眉を8時20分にした店主・正ちゃんに見送られ、
結局は薬局、浅草1丁目1番地1号の「神谷バー」に落ち着く。
浅草のランドマークで飲むスーパードライの中ジョッキ。
ただし、ここの中ジョッキは他店の大ジョッキに近い。
ここは浅草固有の酒、デンキブラン発祥の店でもある。
つまみなどなくともよかったが、
小皿も食卓のにぎわいと、ジャーマンポテトを所望する。
じゃが芋ばかりが主張する小皿は
ベーコンや玉ねぎの影薄く、味付けはウスターソース主体だ。
ジョッキ片手に語るのはもっぱら二十数年前ののニューヨーク物語。
その頃日本ではバブルが弾け、邦銀の凋落が始まりつつあった。
そういやあ、あの頃だったっけ、
田村正和主演の「ニューヨーク恋物語」と
その「パートⅡ」が放映されたのはー。
♪ 誰も知らない 夜明けが明けたとき
町の角から ステキなバスが出る
若い二人は 夢中になれるから
狭いシートに 隠れて旅に出る ♪
(作詞:井上陽水)
岸本加代子、桜田淳子、夏桂子。
それにその後の消息がつかめない五十嵐いづみと韓国女優の李恵淑。
一方の男優陣は峰岸徹、真田広之、柳葉敏郎と
なかなかの顔ぶれだったが、なぜか女優のほうが印象深い。
そして陽水が歌った「リバーサイドホテル」が心に響く主題歌だった。
ひとしきり思い出話のあと、河岸を替えることにする。
足が向くのはどうしても気に入り店だ。
訪れたのは魚介が自慢の「志ぶや」。
ここは元鮮魚店、先代はなくなったがサカナの目利きは
息子たちにしっかりと引き継がれている。
生ビールは飲んできたから芋焼酎の和助をロックで。
初っ端のつまみはまぐろのブツである。
相方はいわしの塩焼きが食べたいという。
そうだよねェ、ニューヨークに新鮮な魚介は数あれど、
メインディッシュに成り得ないいわしの上モノは市場に出回らない。
ヤンキーはいわしなんざ、
缶詰か肥料の材料くらいにしか考えちゃいないんだから―。
明日は名古屋に帰郷する相方のためにそろそろお開きとするかの。
と、ここでひらめいたのが小肌酢だった。
「志ぶや」に来て小肌を食べなきゃ意味がない。
この夜の1軒目に独りで立ち寄った「大瀧商店」では
トンデモないのにガツンとやられちまった。
その仇を同じ小肌で取らねばなるまい。
はたして「志ぶや」の小肌は期待通りにとびっきりの極上品。
小肌に始まり小肌に終わった、春まだ浅き浅草の夜であった。
「神谷バー」
京都台東区浅草1-1-1
03-3841-5400
「志ぶや」
東京都台東区浅草1-1-6
03-3841-5612
すし屋横丁からフラワーロードを抜け、ホッピー・ストリートへ。
「三岩」では瓶ビールで始め、デンキブラン、そして燗酒という流れ。
すでに冷たい生ビールが飲みたくなっていた。
そこで向かったのが「正ちゃん」だ。
ところがギッチョン、満席で身の置きどころがないときた。
すまなそうに眉を8時20分にした店主・正ちゃんに見送られ、
結局は薬局、浅草1丁目1番地1号の「神谷バー」に落ち着く。
浅草のランドマークで飲むスーパードライの中ジョッキ。
ただし、ここの中ジョッキは他店の大ジョッキに近い。
ここは浅草固有の酒、デンキブラン発祥の店でもある。
つまみなどなくともよかったが、
小皿も食卓のにぎわいと、ジャーマンポテトを所望する。
じゃが芋ばかりが主張する小皿は
ベーコンや玉ねぎの影薄く、味付けはウスターソース主体だ。
ジョッキ片手に語るのはもっぱら二十数年前ののニューヨーク物語。
その頃日本ではバブルが弾け、邦銀の凋落が始まりつつあった。
そういやあ、あの頃だったっけ、
田村正和主演の「ニューヨーク恋物語」と
その「パートⅡ」が放映されたのはー。
♪ 誰も知らない 夜明けが明けたとき
町の角から ステキなバスが出る
若い二人は 夢中になれるから
狭いシートに 隠れて旅に出る ♪
(作詞:井上陽水)
岸本加代子、桜田淳子、夏桂子。
それにその後の消息がつかめない五十嵐いづみと韓国女優の李恵淑。
一方の男優陣は峰岸徹、真田広之、柳葉敏郎と
なかなかの顔ぶれだったが、なぜか女優のほうが印象深い。
そして陽水が歌った「リバーサイドホテル」が心に響く主題歌だった。
ひとしきり思い出話のあと、河岸を替えることにする。
足が向くのはどうしても気に入り店だ。
訪れたのは魚介が自慢の「志ぶや」。
ここは元鮮魚店、先代はなくなったがサカナの目利きは
息子たちにしっかりと引き継がれている。
生ビールは飲んできたから芋焼酎の和助をロックで。
初っ端のつまみはまぐろのブツである。
相方はいわしの塩焼きが食べたいという。
そうだよねェ、ニューヨークに新鮮な魚介は数あれど、
メインディッシュに成り得ないいわしの上モノは市場に出回らない。
ヤンキーはいわしなんざ、
缶詰か肥料の材料くらいにしか考えちゃいないんだから―。
明日は名古屋に帰郷する相方のためにそろそろお開きとするかの。
と、ここでひらめいたのが小肌酢だった。
「志ぶや」に来て小肌を食べなきゃ意味がない。
この夜の1軒目に独りで立ち寄った「大瀧商店」では
トンデモないのにガツンとやられちまった。
その仇を同じ小肌で取らねばなるまい。
はたして「志ぶや」の小肌は期待通りにとびっきりの極上品。
小肌に始まり小肌に終わった、春まだ浅き浅草の夜であった。
「神谷バー」
京都台東区浅草1-1-1
03-3841-5400
「志ぶや」
東京都台東区浅草1-1-6
03-3841-5612