2014年3月31日月曜日

第805話 8年ぶりのミルクホール

ときどき顔を出すJR神田駅そばの大衆酒場「三州屋」。
同名店が表通りと裏路地、目と鼻の先にあって
いつも行くのは裏のほうだ。
フフッ、座頭の市っつぁんじゃないが
ずいぶんとご法度の裏街道を歩いてきたからネ。

ともに暖簾分けだから出生は一緒でも経営はまったくのベツ。
それぞれに、そこそこに、常連客をつかんでおり、ご同慶の至り。
裏路地で軽く飲んだあと、
旧連雀町(現神田淡路町界隈)を散策するつもりで
多町の本通りを足早に歩いていた。

とある店の前に差し掛かり、
そのまま素通りしたものの、すぐ足が留まった。
「栄屋ミルクホール」。
ニューヨークから戻り、
日本橋室町のオフィスに通い始めたころだから
かれこれ15年も以前になるんだねェ。
時計が止まったような店内の雰囲気に
心なしか安らぎを覚えていくども訪れた。

そうだ、ハシゴをやめてラーメンを食ったらウチに帰ろう。
記憶が確かであれば、ここのラーメンはすばらしくはなくとも
素朴で昔風で、昭和の香りが立ち上る1杯だったハズ。
間違っても今どきありがちなギトギト脂っこく、
ケモノの臭いまみれの駄品ではない。

何の迷いもなく引き戸を引いていた。
すると先客はゼロ。
背の高い中年のオジさんが独りで
接客と調理を兼ねている様子だ。
注文を受けたら調理場に消えていった。

どんぶりは湯気を立てて運ばれた。
おっ! おおっ!
ひと口すすったスープに舌が即反応する。
ややっ! こりゃ明らかに以前より進歩しているゾ。
チキン主体の出汁がよく出ている。
穏やかなコク味を伴って、食べ手のほほを緩ませる。

ひと箸すすった麺も好きなタイプ。
ストレートの細打ち麺は固めにゆでられており、
しっかりとコシを残している。
量はだいぶん多くなったように思う。
どっしりと食べ応えがあった。

具はもも肉チャーシュー、支那竹、小松菜の3品。
ここにナルトと海苔が1枚づつ加われば、
典型的な昭和の中華そばと相成る。
いや、何とも旨いラーメンに生まれ変わったものだ。
帰宅後、調べてみたら前回の訪問は2006年。
実に8年ぶりの訪問であった。

「栄屋ミルクホール」
 東京都千代田区神田多町2-11-7
 03-3252-1068