「文豪の味を食べる」における、裕次郎の稿のつづき。
以来、平和島にほど近い商店街・美原通りにあった映画館で
裕次郎映画を何本観たことだろう。
当時の青少年のハートをつかんで離さなかったのは
スクリーンの石原裕次郎とスタジアムの長嶋茂雄だったのだ。
やがて二人は生まれついた兄弟の如くに親交を深めてゆく。
数ある裕次郎映画の中から選んだ、わが心のベストスリーはかくの如し。
①「俺は待ってるぜ」(監督:蔵原惟繕)
理屈抜きに好き。全編に渡って映画俳優・石原裕次郎と
港町・横浜のエッセンスに満ちている。
相手役が浅丘ルリ子では画面になじまず、
北原三枝の冷たくも涼やかな面立ちが必要不可欠。
②「赤いハンカチ」(監督:舛田利雄)
ギターを抱えた裕次郎が夜の街を弾き語る。
自身のヒット曲をフィーチャーした映画の中では
もっともスムースに名曲がスクリーンに溶け込んでいる。
相手役が北原三枝では芝居にならず、
浅丘ルリ子のうるんだ瞳が必要不可欠。
③「嵐を呼ぶ男」(監督:井上梅次)
単純な筋書きのようでありながら、
際立ったストーリー性が冴えわたる。
父子から、母子に置き換えられているが
ジェームス・ディーンの「エデンの東」の焼き直しでは?
という疑念が湧くほど。
ドラムスの競演シーンで歌う裕次郎の突き抜け感が新鮮。
このときすでに大スターの出現を予感させた。
ついでに、レコーディングされた歌のお気に入り三曲。
①「北国の空は燃えている」(作詞:岩谷時子 作曲:平尾昌晃)
②「赤いハンカチ」(作詞:萩原四朗 作曲:上原賢六.)
③「よこはま物語」(作詞:なかにし礼 作曲:浜圭介)
哀切を帯びた旋律が裕次郎の声色と溶け合う曲ばかりになった。
よく知られているように、神戸で生まれ、
小樽、逗子と海の見える土地で育った裕次郎はヨットを愛した。
余談だが、同じ湘南の海でヨットを愛好した俳優に加山雄三がいる。
同様の趣味を持ちながら、これほど雰囲気の異なる二人は珍しい。
裕次郎の主演映画には「銀座の恋の物語」があり、
加山には「銀座の恋人たち」と「銀座の若大将」があって、
陸(おか)に上がっても、活躍の場が重なることさえあった。
どちらもアクションをこなす俳優でありつつ、
裕次郎には石坂洋次郎原作の「あいつと私」や「陽のあたる坂道」があり、
加山には成瀬巳喜男監督の「乱れる」と「乱れ雲」があるから
文芸作品においてもそれぞれに持ち味を発揮した。
=つづく=
以来、平和島にほど近い商店街・美原通りにあった映画館で
裕次郎映画を何本観たことだろう。
当時の青少年のハートをつかんで離さなかったのは
スクリーンの石原裕次郎とスタジアムの長嶋茂雄だったのだ。
やがて二人は生まれついた兄弟の如くに親交を深めてゆく。
数ある裕次郎映画の中から選んだ、わが心のベストスリーはかくの如し。
①「俺は待ってるぜ」(監督:蔵原惟繕)
理屈抜きに好き。全編に渡って映画俳優・石原裕次郎と
港町・横浜のエッセンスに満ちている。
相手役が浅丘ルリ子では画面になじまず、
北原三枝の冷たくも涼やかな面立ちが必要不可欠。
②「赤いハンカチ」(監督:舛田利雄)
ギターを抱えた裕次郎が夜の街を弾き語る。
自身のヒット曲をフィーチャーした映画の中では
もっともスムースに名曲がスクリーンに溶け込んでいる。
相手役が北原三枝では芝居にならず、
浅丘ルリ子のうるんだ瞳が必要不可欠。
③「嵐を呼ぶ男」(監督:井上梅次)
単純な筋書きのようでありながら、
際立ったストーリー性が冴えわたる。
父子から、母子に置き換えられているが
ジェームス・ディーンの「エデンの東」の焼き直しでは?
という疑念が湧くほど。
ドラムスの競演シーンで歌う裕次郎の突き抜け感が新鮮。
このときすでに大スターの出現を予感させた。
ついでに、レコーディングされた歌のお気に入り三曲。
①「北国の空は燃えている」(作詞:岩谷時子 作曲:平尾昌晃)
②「赤いハンカチ」(作詞:萩原四朗 作曲:上原賢六.)
③「よこはま物語」(作詞:なかにし礼 作曲:浜圭介)
哀切を帯びた旋律が裕次郎の声色と溶け合う曲ばかりになった。
よく知られているように、神戸で生まれ、
小樽、逗子と海の見える土地で育った裕次郎はヨットを愛した。
余談だが、同じ湘南の海でヨットを愛好した俳優に加山雄三がいる。
同様の趣味を持ちながら、これほど雰囲気の異なる二人は珍しい。
裕次郎の主演映画には「銀座の恋の物語」があり、
加山には「銀座の恋人たち」と「銀座の若大将」があって、
陸(おか)に上がっても、活躍の場が重なることさえあった。
どちらもアクションをこなす俳優でありつつ、
裕次郎には石坂洋次郎原作の「あいつと私」や「陽のあたる坂道」があり、
加山には成瀬巳喜男監督の「乱れる」と「乱れ雲」があるから
文芸作品においてもそれぞれに持ち味を発揮した。
=つづく=