2014年4月8日火曜日

第811話 黄昏の焼きとん (その3)

「カッパ 中野店」のカウンターに独り。
ホーデン(睾丸)の串焼きを味わっている。
この物体はなかなかオツな食感を持っている。
例えていうならば、鶏レバと豚レバの中間感じ。
リンゲル同様、稀少部位につき、
入荷していたらめっけものと心得、必注の一品としたい。

塩で2本食べたのでタレに移行する。
ちょうどこのとき、テーブル席から
「レバー2本、ちょい焼き!」の声が掛かった。
すかさず、ちょい焼きに便乗し、ついでにマメも1本。

レバは本当にちょい焼きだった。
それこそサッとあぶっただけ。
もうちょっと火を通してくれたほうがありがたかったかな。

マメは好物である。
腎臓という臓器のカタチは天豆(そらまめ)にそっくり。
よって通称マメと呼ばれるのだ。
逆にアメリカではある種の豆をキドニー(腎臓)ビーンズと称する。
日本語と反対なんだネ。

マメの食感は独特でサクサクした感じ。
フランス語でロニョンといい、
レストランでは仔牛や仔羊のロニョンを供するが
これは当たりハズレの差が極めて大きく、リスクを伴う。
いわゆるオシッコ臭いのにぶつかることがあるのだ。
いつも思うのだが腎臓がオシッコ臭いのか、
オシッコが腎臓臭いのか、自分の中で結論はまだ出ていない。

ヒモ(大腸)は他店のシロと同じ。
薄めのそれはカリッと焼かれてクリスピー、好きだ。
続いてのチレ(脾臓)もめったにお目に掛かれない部位。
噛んだ歯を一瞬、押し返したあとで受け入れる。
トロ(直腸)は歯応えがあるため、
ヒモ同様に下ゆでされており、とろりとした食感。
以上3本はタレで味わった。
この店のタレはかなり甘めながら
ドロリとしたタイプではなくサラリとしている。

一番搾りのスタウト小瓶を追加してそろそろ締めに入る。
ねっとり感のあるカシラとコリコリの軟骨を塩で。
最後にレバを通常の焼き方でお願いした。
こちらはタレ。
う~ん、ちょい焼きよりもこっちのほうがいいな。

この店は正真正銘の焼きとん専門店。
何せ、ほかのメニューはお新香のみである。
隣りの客が注文したのを盗み見ると白菜だけだった。
これが200円。
焼きとんはすべて100円だから、客も店も計算がラクだ。

と思いきや、飲みものがあった。
紹介しておくと、

 ビール大瓶 570円  黒ビール小瓶 380円
 金印黄桜 290円  上撰白鶴 350円

といったところ。
会計は締めて1950円、安いなァ、うれしいなァ。
笑みをこぼしながら暮れなずむ街にうって出た。

=おしまい=

「カッパ 中野店」
 東京都中野区中野5-56
 03-0123-4567