2016年1月13日水曜日

第1272話 食べ比べて ゆず切り (その2)

「哀愁列車」の歌詞にある”ホームは”もちろんプラットホームのこと。
これは和製英語で本来は platform だから
プラットフォームであるべきところだ。

まっ、それはそれとして歩いて行ったのは
都内に唯一残るチンチン電車、都営荒川線の早稲田駅である。
新宿区・早稲田と台東区・三ノ輪橋を結ぶ荒川線は全30駅。
あいや、全30停留所というのが正しい表現かもしれない。

始発だったので座席に腰かけて行った。
面影橋を過ぎ、学習院下を通りながら漠然と思う。
はて、どこで下車するかの?
候補としては巣鴨の庚申塚、王子の飛鳥山公園、
はたまた荒川区の交通の要衝、町屋あたりだろうか・・・。

何のことはない、珍しくも座った座席が暖房でぬくぬく、
つい居眠りしちまったじゃないか。
よって到着したのは終点の三ノ輪橋。
結局は薬局であった。

三ノ輪とくればアーケード商店街のジョイフル三ノ輪には
「砂場総本家」がある。
あるけれど、砂場系にゆず切りはまずあるまい。
なぜか、正午を過ぎてもいまだ空腹感が襲ってこない。
前夜、飲み過ぎてもいないのにどうしたことだろう。
ええい、ままよ、ここから歩き始めるか。

せっかく三ノ輪まで来たのだからジョイフル三ノ輪を軽く流してみた。
アーケードの中ほどに差し掛かったとき、強烈な異臭が鼻腔を直撃。
そうだ、そうであった、これに弱かったんだよなァ。
異臭といってもサリンみたいに生命に及ぼす危険はないから
怖るるに足らないものの、早いとこトンズラするに越したことはない。

国際通りを南下し、進路を浅草方面にとりながら
ふと思いついて鷲(おおとり)神社の手前、竜泉で右折する。
昭和通りを横断して金杉通りを左に曲がった。
このまま真っ直ぐ進めば根岸の里である。」

ところが根岸には心当たりの日本そば屋がない。
むしろ隣り町の日暮里のほうが何とかなりそうだ。
よって日暮れの里を目的地と決めた次第なり。

記憶が確かならば、
駅東口ロータリーに近い「とお山」は変わりそばを提供しているハズ。
冬場のこの時期、当然ゆず切りはあってしかるべきだろう。
バスにチンチン電車にオン・フット、
いろいろ取り交ぜた末に
ようやくわがストマックもエネルギーの補給を要求し始めた。
心なしか足の運びにもリズム感が生まれてきたのだ。

=つづく=