2016年1月15日金曜日

第1274話 食べ比べて ゆず切り (その4)

日暮里の里での一件から1週間が経とうとしていた。
その日の夕刻、御徒町は昭和通り沿いに
J.C.オカザワの姿を見ることができた。
通りの上に首都高速がかぶさってやがって
歩いていてもちっとも楽しくないストリートだ。

やって来たのは新橋「本陣坊」系列の「吉仙」。
このグループは新橋・浜松町界隈を中心にチェーン展開しているが
すべて屋号が異なり、関連性を疑わせないから
それぞれ独立店舗のように映る。

せいろ・田舎・変わりそばはどの店を訪れても期待に応えてくれる。
今のところ変わりそばはゆず切りのみ。
これが十数年前の「本陣坊」ではしそ切りとの二段構え。
しかもこのしそ切りときたひにゃ秀の逸にして抜の群。
ゆず切りの上をいってそれこそ都内随一、
いや、日本一の変わりそばと断言してもよいくらいだった。

それが忽然と姿をかき消したのだ。
理由をスタッフに訊ねても真っ当な答えなんか返ってきやしない。
深くはツッコまないから
何とか再び打ち始めてくれないものかなァ。
しそ切りの復活を切に望むわが心根である。

当夜はのみとも・T栄サンと待ち合わせた。
ほとんど同時に入店し、サッポロ黒ラベルで乾杯する。
J.C.はここに来る前、御徒町ガード下の「味の笛」で
アサヒスーパードライの生を飲ってきた。
300ml くらいのプラスチックのコップで2杯飲んだ。

ゆえにいきなり日本酒でもよかったのだが、
根っからのビール党につき、何の問題もない。
ただしチラリと見た品書きに驚いた。
中瓶が700円とある。
エッ、こんなに高かったかいな?
町のそば屋でこの値段はほとんど異常である。
行きつけのそば店、根津の「新ふじ」なんか大瓶で650円だもの。
銀座の一等地、尾張町のうなぎ屋「竹葉亭」よりも高いんだから。

「たかがソバ屋が」―なんて言いたくないけれど、
アッ、もう言っちゃってるか!
とにかくずいぶん強気の値付けだねェ。
もともと商いの仕方にあざとさ満載のグループにつき、
今さら驚くこともないんだが
やはり他店と比べると、鼻についてしょうがない。
ありゃりゃ、ゆず切りを食べ比べるつもりが
値段の見比べになっちゃった。

ドリンクがそうなら当然のごとく、
料理のほうもどんどんプライス・アップされている。
刺身の盛合せなんぞオーダーしたら
ちょいとした鮨屋並みになってしまう。
まったく何考えてんだか!
くわばらくわばら・・・。

=つづく=