2016年1月19日火曜日

第1276話 食べ比べて ゆず切り (その6)

御徒町のそば処「吉仙」。
注文を取ったものの、
すぐに戻って来た接客のアンちゃんが言うことには
桜海老のかき揚げが売り切れ。
代わりに海老と蓮根のかき揚げを推奨された。
相方と目線を合わせ、互いにうなずきながら
出したサインは”OK、Go!”である。

天ぷらたちはなかなかに食べ応えがあった。
そもそも穴子の脇に蓮根と獅子唐が添えられている。
蓮根はかき揚げと重複してしまった。
穴子だけに天つゆを使用し、あとは塩だけでいただく。
日本そば屋の天ぷらには”当たり”が多いことを
あらためて実感した次第だ。

芋焼酎に切り替えて山ねこをロックで。
以前と比べて焼酎を飲む機会がずいぶん少なくなった。
一応、自宅にはロック用に一刻者(赤)。
各種酎ハイ用にキンミヤをストックしてはいるけどネ。

いよいよ締めのゆず切りである。
日暮里の「大宝家」のソレに満足できず、
かねて馴染みのある「吉仙」のコレを食べに来たんだからネ。
そば前の小肌や穴子は言わばバイプレイヤー、
本日の主役はあくまでもゆず切りである。

そんならハナから食えや! ってか?
いえいえ、昼めしどきならいざ知らず、
晩酌どきにいきなりそばはないでしょう。
池波正太郎翁など、昼日なかから
「酒を飲まぬくらいなら蕎麦屋には入らぬ!」とまで
言い切っておられる。

J.C.はゆず切り2段(1200円)、
T栄サンはせいろとゆずを1段づつ(1000円)、それぞれお願いした。
ここのそばは小さめのせいろが2枚で1人前なのだ。
一箸たぐってみると、う~ん、ぜんぜん違うなァ。
歯応え、舌ざわり、のど越し、非の打ちどころがない。

せいろや田舎にも兼用するつゆは
変わりそばにちょいと強すぎるきらいはあっても
じゅうぶんに満足のゆくものである。

会計時に手を伸ばしたビジネスカードを
今、何気なしにつまんでビックリ!
前述したディズカウントストア「多慶屋」の周りだけでも
老舗の当店「吉仙」を筆頭に
「心洗庵」、「萬丸」、「和奈庵」と計4軒も出店している。

いや、儲かるんだねェ。
そりゃそうだわ、町場のそば屋としては高すぎるもの。
食わすアホウに食うアホウ、
同じアホなら食わなきゃ損、ソンってことかいな。

=おしまい=

「吉仙」
 東京都台東区台東4-8-5 T&T御徒町ビルB1
 03-5688-1200