2016年6月21日火曜日

第1286話 しかたなく秋葉原 (その8)

JR神田駅そば、「三州屋」のカウンターに独り。
たまにゃ自分の定番以外から
何か注文するつもりで品書きとにらめっこしている。
でもネ、そうちょくちょく来るわけじゃないから
結局は薬局なんですわ。

よって、定番の筆頭格、蟹サラダ。
気温も湿度も高い日につき、冷菜がほしくなるのは必然だ。
もっとも蟹系のつまみは店によってまちまち。
ヒドいのにぶつかっちゃうと、
「金返せ!」―普段、温厚なJ.C.がそう叫びたくなることもある。
その点、ここは安心も安心、大安心。

大好物の蟹は生酢にほんのチョッピリ生醤油を垂らした小皿に
ちょんとつけて食べるのが好みだが
当店の自家製マヨネーズはとても秀逸。
蟹とレタスをこよなく引き立てる。
サラダ好きの女性同伴時には歓ばれること受け合いの逸品なり。

ビールを飲みながら蟹をつまんでいてボンヤリと思った。
そうだ、これを自宅の朝食、あるいはブランチに応用しよう。
となると、白飯よりトーストだろうな。
葉野菜のほうはレタスでもクレソンでもルッコラでもいいけど、
蟹だけはちゃんとしたのを使おう。

かといって朝から生蟹を蒸したり茹でたりはできないから
缶詰に頼ることになる。
奮発してタラバの脚肉でいっちゃおうか―。
紅ズワイのほぐし身ってゆうか、クズ肉は避けよう。
間違っても蟹かまぼこだけは使うまい。
つらつらとそんなことを考えながら
ビールと蟹の相性の良さに酔いしれた。

空瓶を手に取った接客のオバちゃんが
「お飲みもの、次は何にします?」―この声でわれに返った。
「う~ん、そうだねェ・・・」―ちょいとばかり逡巡する。

日本酒に移行せずに黒ラベルの2本目を。
同時に銀むつのあら煮をお願いした。
どうしても気に入りメニューを指名してしまう。
バーで「いつものヤツ!」、
クラブで「いつもの娘(こ)!」、
そのスタイルに等しいものがあるかも?

銀むつは晩酌の友だけでなく、
定食の看板メニューとしても定着している。
しかも「三州屋」がエラいのは終日、定食を提供しているところだ。
酒場でありながら食堂としての役割をしっかりはたしている。

白鶴の冷酒を1本飲んで夜の神田に出た。
ここは新橋と並ぶオヤジタウン、安直な飲み屋がズラリと並んでいる。
普段ならもう1軒立ち寄るところを何故か真っ直ぐ帰宅した。
身体の調子でも悪いんかいな?

=おしまい=
 「三州屋 神田駅前店」
 東京都千代田区3-22-5
 03-3252-3035