2016年6月27日月曜日

第1390話 薄い新聞紙の猫 (Cat on a thin newspaper) (その1)

テネシー・ウイリアムズの戯曲、
「熱いトタン屋根の猫 (Cat on a hot tin roof)」は
1958年にMGMが製作した映画で一躍脚光を浴びることとなった。
その3年前には「エデンの東」のエリア・カザン演出によって
舞台化され、注目はされていた。

当時の舞台はもう観ることができないから
作品に近づこうとすると、もっぱら映画に頼るしかない。
もっとも映画はずいぶん脚色されており、
オリジナルを求める向きは原書にせよ訳書にせよ、
”本を読む人”となるほかはない。

映画における”猫”はエリザベス・テイラーが演じた。
若かりしリズは目をみはるほどに美しい。
「熱いトタン屋根の猫」、「陽のあたる場所」、「ジャイアンツ」、
どの作品をとっても彼女の美貌は観る者を圧倒する。
しかもそれぞれの共演者、ポール・ニューマン、モンゴメリー・クリフト、
ジェームス・ディーン、いずれの相手役ともシックリ並び立っていた。

ちなみにTVドラマ版の「熱いトタン~」では
実生活で結婚して、離婚して、また結婚した、
ナタリー・ウッドとロバート・ワグナーのキャスティング。
観たことはないが映画に比べ、
役者の存在感という点で一回りシュリンクしている。

往時、リズは同世代のオードリー・ヘプバーン(こちらが3歳上)と
人気を二分していた。
ちょうど一世代上のキャサリン・ヘプバーン&
イングリッド・バーグマンのように―。

リズと比較してオードリーは相手役に恵まれていない。
オジさん、いいえ、ジイさんとの共演ばかりだ。
しかし、よくよく考えれば、
ある意味、共演者に恵まれたのかもしれない。
すべて名を成した大物ばかりだからネ。
おさらいしてみよう。

「ローマの休日」・・・グレゴリー・ペック
「麗しのサブリナ」・・・ハンフリー・ボガート
「昼下がりの情事」・・・ゲーリー・クーパー
「パリの恋人」・・・フレッド・アステア
「シャレード」・・・ケーリー・グラント
「マイ・フェア・レディ」・・・レックス・ハリソン
「おしゃれ泥棒」・・・ピーター・オトゥール
「暗くなるまで待って」・・・エフレム・ジンバリスト・ジュニア

いや、揃いも揃って老頭児(ロートル)ばかりじゃないの。
だけれどもビッグネームばかりなのだ。
彼女が選んだわけじゃないが
これほどのオールドマン・キラーはほかにいない。
ところが探せばあるもんですな。

=つづく=