2018年1月17日水曜日

第1789話 音無しのラーメン (その2)

谷中と千駄木の境界線上をのた打つ、
へび道を抜けて三崎坂(さんさきざか)に出た。
目の前には老夫婦が営む、
古く良かりし町の中華屋さん、「砺波」があった。
一度はここの野菜そばに惹かれたのだったが
ふと、他の一軒を思い出した。

このまま三崎坂を横切り、直進するとよみせ通り。
しばらく行って谷中ぎんざのT字路を越え、
なおも真っ直ぐ進めば、
左手に和風ラーメンの「麺や ひだまり」が見えるハズ。
未訪ながら以前から気になっていた店である。
そうだ、トライしてみよう。

てなこって「ひだまり」に到着すると、
順番待ちの客は二人ほど。
これならすぐ入れると思い、後尾につく。
結局はそれから10分後、やっと案内された。

入口の券売機で和塩らぁ麺(720円)のチケットを購入。
右手にカウンターが1本、奥へと続いている。
10席はあるだろうか?
真ん中に接客係のための出入り口が設けられ、
カウンターを二分している。
奥の端っこ、出入り口の隣りに落ち着いた。
店内はザワザワと騒がしい。

卓上のメニューに当店のスープの出汁は
大山鶏、伊吹いりこ、枕崎鰹節、知床羅臼昆布を
使用と明記されていた。
ふ~ん、四重奏の賜物ですか―。

和塩らぁ麺はなかなか届かない。
そうこうしているうちに
左側の客たちがいっせいに立ち上がった。
見れば四人組じゃないか、どうりで喧しいわけだヨ。

代わりに入店した来たのがこれもまた四人組。
それも外人3、邦人1の組合わせだ。
しゃべっているのは米語であった。
アメリカのオバちゃんがJ.C.の左隣りに座った。
あちゃ~、こいつは困ったことになったゾ。

ほどなく和塩らぁ麺が到着したものの、
マナー上、音を立ててすすることができないヨ。
ラーメンはすすらなきゃ、旨くもなんともない。
それどころか唇や舌がアチチのチ。
「大菩薩峠」の主人公、極悪非道の机竜之助よろしく、
音無しの構えを余儀なくされたのでありました。

エッ? 味はどうだったんだ! ってか?
そんなん判るワケないじゃん。

「麺や ひだまり」
 東京都文京区千駄木3-43-9
 03-3821-5211