カキのバタ焼きでビールを楽しんでいる。
小瓶はすぐになくなるので、いつになく大事に飲んでいる。
1階のキャパは2卓12席ほど。
先客もいなければ後客も現れない。
趣きのある空間を独り占めにしていた。
そこへOL風の2人組が来店。
「ご新規さん2名で~す!」―
オバちゃんが厨房に伝えた。
彼女らは店内を見回し、設いに感じ入っている様子だ。
そうしておいて額を寄せ、メニューとにらめっこ。
食べたいものがたくさんあって迷ってるネ。
オバアちゃんが
「お決まりになりましたらお呼びください」―
その足で取って返し、今度は厨房に
「まだ決まりませ~ん!」―
フフフッ、何だか微笑ましい光景。
結局、2人が通したのはカキフライとオムライス。
カキのほうは定食である。
これを分け合って食べるのだろう。
無難にして正しい選択といえましょう。
「来福亭」の隣りは親子丼としゃも鍋が人気の「玉ひで」。
殊に昼の親子丼を求める客はあとを絶たず、
いつ見ても長蛇の列を成している。
この人ゴミ、もとい、人混みは
もはや甘酒横丁の風物詩となった感がある。
ただし、風情なんかないし、うっとうしいことこのうえない。
都の有形文化財に登録されてもよいほどの「来福亭」。
この老舗にふさわしいメニューは
ポタージュ、メンチエッグ、カニヤキメシといったところか。
みなヨソでほとんど見かけぬ、言わば死に皿だネ。
以前は鷹揚に構えて土日祝と休んでいたが
最近ようやくサタデーランチの提供を始めた。
おかげで週末しか自由にならない向きや、
遠来の客がずいぶん増えたようだ。
若いバカップルが騒々しく入ってきた。
オバアちゃんが2階に上がるよう告げると、
ぶったまげやしたネ。
何と、男が土足のまんま階段をトントントン。
5段ほど上がったところで、肝をつぶしたオバアちゃん。
「お靴は脱いでいただきたいんですよぉ!」
上がり口に客用のサンダルが揃えてあるのに
見て判らんかネ、バカがっ!
百有余年の歴史を文字通り、土足で踏みにじりやがった。
時刻は12時55分。
あわただしく済ませたお勘定は1200円也。
娘サンに釣銭のないよう手渡し、急いで外に出る。
この日、時間に追われたのには
それなりの理由があったのでした。
=おしまい=
「来福亭」
東京都中央区日本橋人形町1-17-10
03-3666-3895
小瓶はすぐになくなるので、いつになく大事に飲んでいる。
1階のキャパは2卓12席ほど。
先客もいなければ後客も現れない。
趣きのある空間を独り占めにしていた。
そこへOL風の2人組が来店。
「ご新規さん2名で~す!」―
オバちゃんが厨房に伝えた。
彼女らは店内を見回し、設いに感じ入っている様子だ。
そうしておいて額を寄せ、メニューとにらめっこ。
食べたいものがたくさんあって迷ってるネ。
オバアちゃんが
「お決まりになりましたらお呼びください」―
その足で取って返し、今度は厨房に
「まだ決まりませ~ん!」―
フフフッ、何だか微笑ましい光景。
結局、2人が通したのはカキフライとオムライス。
カキのほうは定食である。
これを分け合って食べるのだろう。
無難にして正しい選択といえましょう。
「来福亭」の隣りは親子丼としゃも鍋が人気の「玉ひで」。
殊に昼の親子丼を求める客はあとを絶たず、
いつ見ても長蛇の列を成している。
この人ゴミ、もとい、人混みは
もはや甘酒横丁の風物詩となった感がある。
ただし、風情なんかないし、うっとうしいことこのうえない。
都の有形文化財に登録されてもよいほどの「来福亭」。
この老舗にふさわしいメニューは
ポタージュ、メンチエッグ、カニヤキメシといったところか。
みなヨソでほとんど見かけぬ、言わば死に皿だネ。
以前は鷹揚に構えて土日祝と休んでいたが
最近ようやくサタデーランチの提供を始めた。
おかげで週末しか自由にならない向きや、
遠来の客がずいぶん増えたようだ。
若いバカップルが騒々しく入ってきた。
オバアちゃんが2階に上がるよう告げると、
ぶったまげやしたネ。
何と、男が土足のまんま階段をトントントン。
5段ほど上がったところで、肝をつぶしたオバアちゃん。
「お靴は脱いでいただきたいんですよぉ!」
上がり口に客用のサンダルが揃えてあるのに
見て判らんかネ、バカがっ!
百有余年の歴史を文字通り、土足で踏みにじりやがった。
時刻は12時55分。
あわただしく済ませたお勘定は1200円也。
娘サンに釣銭のないよう手渡し、急いで外に出る。
この日、時間に追われたのには
それなりの理由があったのでした。
=おしまい=
「来福亭」
東京都中央区日本橋人形町1-17-10
03-3666-3895