2018年12月31日月曜日

第2035話 友 遠方へと帰る (その2)

赤城の山も今宵限り、じゃなかった、
平成30年も今宵限り。
来年の今月今夜は
新しい年号最初の大つごもりとなりますな。

さて、少々遅刻をして「3代目 むら上」に駆けつけると、
オッサン2人は2階の座敷で
生ビールのジョッキを合わせたところであった。
取り急ぎ、もう1つお願いしてめでたく乾杯。

直後に届いた突き出しは白滝のたら子和え。
先刻の愚品とは対照的に真っ当なモノが出てきた。
そしてすでに2人が通してくれていた、
みょうがきゅうりが運ばれる。
3人で3鉢はちと多かろう・・・と思ったものの、
これがアッサリと上品でイケる。
きゅうり主体ながら特殊なピーラーで
そぎ切られており、食感がとてもよろしい。

当店の昼は丼やお重が中心だが
それでも通常のうな重だけでなく、
あいのり重、鰻まぶし丼、うなきも丼など、
品揃えは豊富だ。

夜はどうやら晩酌と食事が半々と見受けられた。
われわれはもちろん左党トリオにつき、
取りあえず飯粒は要らない。
たぶん、ずっと要らないことになるだろう。

1人4本当ての鰻ひと通り(1280円)というのを3人前。
陣容は、短尺・ひれ・肝・滋鰻つくねで、ひれがイチ推し。
自慢に滋鰻をかけたつくねは
おそらく鶏の挽き肉が混入しているらしく、感心しなかった。

ビールから焼酎のロックに切り替える。
最初にはだか麦の兼八、あとは芋の山猫を所望した。
どちらもグラスになみなみ注がれ、酩酊必至と相成ろう。
案の定、ホンの数杯でグラリと腰に来た。

ほかにも煮こごり、肝刺し、う巻きをいただき、
うな重やひつまぶしを欲しがる者とてなく、一次会はお開き。
支払いは3人で1万1千円。
うなぎを堪能したにもかかわらず、居酒屋並みである。
2匹のオッサンも唖然としていた。

大森に来たなら行く先は一つ。
そう、一度滑落したら易々とは這い上がれぬ地獄谷である。
およそ1年ぶりで老舗中の老舗、
というより、ヘル・ヴァレー最古のスナック、
「T」の止まり木に3羽のカラスが止まった。
和服姿のママは八十路まっしぐらにして変わらずお元気。

それぞれの行く末に幸多からんことを祈りつつ、
「大利根無情」の平手造酒よろしく、
地獄参りの冷や酒をあおるオッサンたちでありました。

それではみなさん、よいお年越しを!

「3代目 むら上 大森山王店」
 東京都大田区山王2-4-4
 050-5596-5920