2019年8月6日火曜日

第2191話 意外にイケたワイン食堂 (その1)

数ヶ月ほど前に都内の飲食店で知り合った、
K田サンからけっこうなものを頂戴してしまい、
お礼を兼ねて一席設ける運びとなった。
リクエストはワインバーかビストロとのこと。
互いに勝手のよい上野・御徒町界隈に絞って物色に及んだ。

ワイガヤのワインバー、静まり返ったビストロ、
どちらもあまり足を踏み入れたくないが、たまにはいいでしょう。
いろいろ評判を確かめたうえで
松坂屋裏の「ワイン食堂 パパン 御徒町店」の予約をとった。

すると、当日のちょうど1週間前、
練馬の「あわび亭」での食事中にケータイがブルブルすることしきり。
とりあえず打っちゃっといて、のちほど留守録をチェックしたところ、
「ご予約時間を30分過ぎましたので
 キャンセル扱いにさせていただきます」―
「パパン」からの連絡だった。
何かの手違いにより、1週ずれ込んじゃってるヨ。

あらためて予約を取り直し、相方と待合せたのは京成上野駅。
何のためのパレードだか、
皆目、見当のつかぬダラダラとした催しが行われている中央通り。
人波をかき分け、かき分け、目的地に向かった。

週末の18時とあって店内は熱気ムンムン。
席の埋まり具合は9割を超えている。
カウンターに着くと、さっそくスタッフから先日のお侘び。
いや、こちらの言い間違いの確率だってまったくゼロではない。
でも、こういうことは大事なことで
この一言が有ると無いでは大違い。
これから傾けるジョッキとグラス、
その中身の味わいが格段に変わってくるのだ。

黒ラベルの中ジョッキで乾杯。
この人と二人きりで飲むのは初めてである。
料理の注文を任せられ、
相方の要望を加味しながら通したのは最初にアリゴ。
フランスはオーブラック地方の郷土料理で
じゃが芋とチーズを混ぜ合わせた熱いソースに
バゲットなどのパンを絡めて食する、
チーズ・フォンデュに似た料理だ。

そして皮付きヤングコーンのロースト・トリュフソース。
これは内側の柔皮数枚と
もじゃもじゃヒゲも一緒に食べられるとのこと。
なかなかに珍しい一皿である。

すると接客の男性スタッフ曰く、
「どちらも多少お時間をいただきますので
 何かすぐにお出しできるお料理はいかがですか?」―
目の前に並んだ仏風おばんざいをチラッと見たJ.C.、
「それじゃ、そこのキャロット・ラペを」―
こうして初顔合わせの宴は始まったのでした。

=つづく=