2019年8月29日木曜日

第2208話 メキシコ牛のローストビーフ (その1)

その日の散歩は荒川区・西日暮里でスタート。
日暮里→根岸→入谷→三ノ輪のルートをとるが
三ノ輪のあとは未定だ。
足の向くまま気のむくままに
吉原か南千住あたりで一飲に及ぼう。

それに加えて三ノ輪橋から
都営荒川線・早稲田行きの乗客となる手も残されている。
となれば、沿線の町屋・王子・大塚・東池袋と
止まり木探しに苦労することなどまったくない。

てなことを漠然と思い描きながら
通過した日暮里駅前ロータリーだった。
取り合えずランチをいっとこう。
さしたる空腹感がなくとも
ヘンな時間に食事を取ると予定がずれ込んで支障をきたす。
それに多くの店が中休みに入る時間帯も間近い。

正岡子規が愛した「羽二重団子本店」を過ぎてしばらく、
洋食屋の前に差し掛かった。
「キッチンフォーク」は何度も通りすがって
存在は認知していても利用したことはない。

わりと最近、お台場だったかな?
どこかのグルメ・イベントで当店が
チャンピオンになったとか、ならなかったとか・・・。
まっ、択んだのが芸能人じゃ、アテにゃならんがネ。
店先の立て看板に見入った。
正式な店名は「匠のローストビーフ キッチンフォーク」。
スモールサイズのローストビーフ丼が980円とあった。
オージーかU.Sか、値段からして国産牛はまずない。
 
ここ数年、都内のあちこちでガ盛りロービー丼を
ウリにする店が隆盛を極めているらしい。
さりとて食指動かぬJ.C.はためしていない。
ローストビーフと白飯の相性がいいとも思えないし・・・
間口が狭いぶん、奥行きのある店内は鰻の寝床さながら。
先客2組は熟年カップルと女子4人のグループ。
昼めしどきとあって
客は続々入店してくるものの女性ばかりだ。
どこから来たか存ぜぬけれど、ようこそ根岸の里へ―。
 
田端のタイ料理店同様、店内にオッサンの姿はない。
それどころか若いリーマンの影すら見えない。
近頃の男たちは揃いも揃って
牛丼・カレーなどのチェーン店や居酒屋の昼営業、
はたまた日本そば屋か町中華でワシワシやってるんだろう。
それじゃ、オフィスのマドンナを
スマートにエスコートするのは不可能でしょうヨ。
 
=つづく=