2019年8月22日木曜日

第2203話 盆はほんとにご用心 (その1)

「夏にご用心」は桜田淳子のヒット曲。
J.C.の場合は夏というよりお盆がトラブルの元。
お盆はほんとにご用心なのである。

去年のお盆の一日。
何も考えずにボーっと出掛けてしまい、
奥沢の洋食屋、田園調布の鮨屋、川崎の酒場、
ことごとく休業の憂き目をみた。

だから今年は気をつけようと思っていた。
休みに恵まれた人なら9連休のその初日。
暑さに打ち勝つため、カレーを食べる気になった。
この季節はおうちカレーなんかじゃ駄目。
洋食屋やそば屋のものもしっくりこないし、
欧風カレーなんぞ、まったくのパンチ不足だ。
ってゆうかぁ、欧風カレーはハナから好きじゃない。

もう何年も口にしてないけど、
一応、千代田区・神保町や一番町にある、
欧風カレーの有名店は試した。
ところが、重くてしつこくて
どうにもならず、匙を投げ出す始末。
サイドのじゃが芋なんか、
手を付ける気にもならんかったネ。

猛暑に対抗するには暑い国の熱いカレーしかあるまい。
さすれば、第一感はカレーの母国・インド。
あとは最近流行りのスリランカあたりか―。
シンガポール駐在が長かったので
当地を含めたマレー半島のカレーは好きだ。
おっと、その北のタイも忘れちゃいけない。
う~ん、迷うなァ。
ここはずいぶんご無沙汰しているタイカレーにしよう。

出向いたのは北区の田端文士村である。
ここにタイ大使館で腕を振るっていた、
女性シャフが店を開いたと聞いた。
何種類かのメニューから
二択可能なハーフ&ハーフがランチのオススメらしい。

JR田端駅前の歩道橋を上って
田端高台通りを右にに進み、1分足らずで到着。
ありゃあ、何てこったい、昨日と今日は夏休みだとサ。
事前にネットで調べたら無休だというから
左団扇のおっとり刀でやって来ちまったヨ。
電話チェックを怠った自分のミスを承知しつつも
これだからお盆はイヤなんだ。
その日は近所の店でお茶を濁し、文士村をあとにした。

その3日後、再び高台通りを往くJ.C.の姿を見ることができた。
電話で営業の有無を確かめ、正午前には引き戸を引いた。
ん? ちょっと待て、鮨屋やそば屋じゃあるまいし、
タイ料理屋の入口が引き戸ってのも珍しいな。
うっかり書き忘れたが店の名は「ポム タイ料理」という。

=つづく=