2019年8月27日火曜日

第2206話 穴子がイノチの江戸前天丼 (その1)

以前はひんぱんに出没した浅草なのに
ここ数年は足が遠のき気味。
それでも今年は出掛けているほうだ。

ある晴れた日の午後、
台東区のコミュニティバスに乗った。
歩いていたらバスが目の前に止まったからだ。
数日前、たまたま来た都営バスに飛び乗って
苦い思いをしたばかりなのに学習効果ゼロの馬鹿なワタシ。
瞬間、細川たかしのデビュー曲が脳内を流れたが、やめとく。

いつの間にか循環バスは浅草に着いていた。
今日は天ぷらでビールの気分。
自然と足が気に入りの和食店「三岩」に向かう。
ここの穴子天はお世辞抜きですばらしい。

ありゃ、シャッターが下りてやんの。
貼り紙によれば、都合でしばらく休むとのこと。
本日休業は受け入れるけど、
このままの閉業は勘弁してほしい。

近くの天ぷら店「多から家」に回った。
歩く足取りが重いのは致し方あるまい。
テクテクではなくトボトボだ。
訪問は10年ぶりくらいで
最後に来たときは予備校講師から
タレントに転じた金ピカ先生と一緒だった。

当店の天ぷらはそのままより天丼に向いている。
揚げるタイプは異なるものの、
中野ブロードウェイ2階の「住友」と同じ。
あそこも本筋は天丼だ。

見覚えのある店主が迎えてくれた。
面貌にそれなりの年輪が刻まれている。
おや? 女将(母親)の姿が見えず、
店主のワンオペとなっている。
事情を訊ねるほど親しくないので看過するほかはない。
品書きを手にして迷ったのは

江戸前天丼(穴子・芝えび・めごち・きす)1800円
穴子と芝えびの天丼穴子・芝えび・えび)1400円

以上の二つだ。
ここはサカナたちに敬意を表して江戸前天丼をチョイス。
アサヒの地元につき、スーパードライも忘れずに―。

あゝ、美味かった! 
そんな記憶がまったくない「多から家」。
月日の流れとともに進化を遂げているかも・・・
なんて淡い期待を胸にビールをグラスに注いだ。

=つづく=