2020年7月15日水曜日

第2437話 あぶらぼうずの衝撃 (その3)

江戸川区・平井の「焼きどころ とんとん」。
此処はもともと焼肉屋だったが
業態を変え、割烹風居酒屋になっている。
店主の言うことには同じ並びの数軒先、
「きんめ家」の2号店とのこと。
「きんめ家」なら8年前に一度利用した。

おっと、そんなことよりグループ客の騒音に耐え切れず、
決然と立ち上がったのだった。
よっぽど連中に教育的指導を施そうと思ったものの、
J.C.が突如として始めたのは
カウンターの左端から右端へのお引っ越し。

ビール瓶とグラス、箸に小鉢におしぼりと
ぜえ~んぶ、自分で運びやした。
落ち着きを取り戻し、あらためてトクトクトク。
ポカンと見ていた店主の口元もやがて苦笑いに変わる。

お詫びの印でもなかろうが
「こちらサービスです」
運んでくれたのは白菜漬け。
浅めの漬かりのこいつがめっぽう美味い。
一鉢注文したかったけど、
ちょいとみっともないからやめとく。

中瓶の2本目はスーパードライ。
発注から15分後、あぶらぼうずが煮上がった。
ヒタヒタの煮汁に半ば沈んだ白い切り身は
豆腐半丁ほどのサイズ。
一箸入れると、ホッコリほぐれた。

うっ、うま~い!
繊細なテクスチャーに上品な脂が乗り、
火の通しジャストにして煮汁の塩梅もよろしい。
実に衝撃的だ。
さすがに煮魚を自慢するだけのことはあった。

品書きをチェックしたら煮魚は
いわし 680円  あぶらぼうず 1380円
きんめ半身 2800円~
とあった。
そう、経営母体の「きんめ家」は
金目鯛の最高級品といわれる、銚子産のみを扱う。
高価なわけである。

しばし陶然としてハタと我に返る。
品書きを再び手に取った。
当店のもう一つのウリは
千葉県産・林SPFポーク使用の豚肉料理だ。

豚肉は大好き。
舌なめずりしたら唇の端にさっきの煮汁が残ってたんだネ。
うん、いい味だ。

=つづく=