2020年7月1日水曜日

第2427話 東京の東の果ての篠崎へ (その3)

江戸川の川っぺり、
ポニーランドの脇でミニブタを見ている。
つくね&がんもがいるハズだが
この日はがんもの姿なく、つくねだけが
子どもたちの黄色い声を受け止めていた。

それにしても焼き鳥屋やおでん屋じゃあるまいし、
れっきとした哺乳類に
つくね&がんもはあんまりだろうヨ。
独りでガキンチョの金切り声にさらされて
つくねヨ、お前も泣きたかろ?

飼育係のオジさんと目が合ったので訊いてみた。
本八幡へ歩いて行くには
川下の行徳橋を渡るほかに手立てはないものかと―。
オジさん下流を指差しながら応えて
「あそこに水門が見えるでしょう?
 そこを人が通れるんですヨ。
 近道だけど、行って戻るんだから距離ありますヨ」
いや、訊いてよかった。
知らなきゃ、水門を素通りしてたかもしれない。

北区・赤羽の岩淵水門が隅田川と荒川を分かつ門なら
江戸川水門は旧江戸川と江戸川放水路を分かつ。
江戸川の例に倣えば、
荒川は隅田川放水路の役割をも担ってたんだネ。

水門は途中で行徳橋に合流し、なるほどこれは近道だ。
千葉県に入って此処は市川市・稲荷木(とうかぎ)。
本八幡駅はまだまだ遠かった。
都営新宿線ならたった一駅のところ、
「オルターヴォラ」を出て70分が経過していた。
まっ、長距離散歩を遂行する身、大したことないけどネ。

何はともあれ、ガソリンを補給せねば―。
上野・浅草と違い、本八幡で昼から飲ませる店は少ない。
2年半前に一度訪れた「馬越」をのぞくと、
コの字カウンターに空席が二つ、三つ。
すんなり座ったとしてもかなりの”密”である。

いや、コロナに関する”密”には
どちらかといえば無頓着ながら
狭苦しいところで飲むこと自体がイヤだ。
ほかを物色するとしよう。

駅の北と南を往ったり来たりしたものの、
気に染まる酒場が見つからない。
時刻は15時半を回っていた。
ここで思い当ったのが市川駅そばの「朝日屋」。
そう、前回は「朝日屋」から「馬越」に流れたのだった。

電話を入れると、すでに営業中。
当店は15時半開店である。
市川はJR総武線で一駅。
一刻も早く駆けつけたい気持ちをなだめ、あえて歩いた。
すべてはガソリンをより旨く飲むためでした。

=おしまい=