2020年8月3日月曜日

第2450話 湘南・国府津の海を見に (その4)

小田原市・国府津駅前の「餃子ショップ」。
ぬるいビールはイマイチながら熱い餃子が旨い。
酢・醤油・辣油など試すと、何も付けずが一番だ。
ふと思いつき、ウスターソースを垂らしてみたが
ハハ、餃子は焼売と違って
ソースにまったく合わないや。

ビールは空いたし、そろそろ席を立つとしようか―。
いや、待て、豚バラ蒲焼きが心の内にわだかまってる。
初めて出会ったユニークな料理の実物を食わずして
このまま立ち去ったら、のちのち悔恨の念に苛まれる。
こうなりゃ、ぬるくたってしょうがねェ、
「ビールもう1本と豚バラ蒲焼きください」
「ハ~イ、かしこまりました」

このとき四人組の家族連れが現れたので
すかさず卓をゆずってカウンターへ移る。
店主とその母親だろう、以後、二人はより優しくなり、
いろいろ気を遣ってくれるようになった。

運ばれた豚バラ蒲焼きは
斜めに包丁を入れられ、豚レバに見えなくもない。
10切れはあろうか、粉山椒が振られ、
甘辛の醤油味ときたひにゃ、
味覚音痴が目をつぶって食べたら
うなぎと区別がつかないかもしれない。
まとまった一品に仕上がっている。

豚肉がとても柔らかいのは関東のうなぎ同様、
蒸しのプロセスを踏んだものと推察された。
付合わせはキャベツ、きゅうり、
プチトマト、レモンのスライス。
これはアジフライやとんかつのそれと一緒だろう。

客の注文を聞いていると、
餃子意外に干物セット(750円)も人気だ。
内容は、アジかサンマの干物、コロッケ、
ソーセージフライ、冷奴、ごはん、味噌汁、お新香。
干物が出て来るところが湘南の中華屋ならではだ。

金太郎飴一家が各自、
「ごちそうさま!」の言葉を残して退出していった。
J,C,も彼らのあとを追うように会計を済ませる。

どんよりとした空の下、国府津海岸へと坂道を降りてゆく。
すると、よせばいいのに、いきなりパラパラッときた。
今夏は何度、雨に祟られたことか―。
灰色にくすんだ湘南の海を一べつして駅へ戻る。

これから西に向かうのは決定済み。
はて、何処に行くとするかの。
小田原、熱海、三島、もうちょい先の沼津かな?
プラットフォームに熱海行きの列車が滑り込んで来た。

=おしまい=

「餃子ショップ」
 神奈川県小田原市国府津4-2-1
 0465-48-3936