台東区の南寄り、東西南北四辺を
新堀・清洲橋・蔵前橋・春日の大通りで囲まれた、
狭い一画に鳥越・三筋・小島の町々がある。
千貫神輿で有名な神社と、情緒を残すおかず横丁で
広く世に知られた鳥越はともかく、
用事がなけりゃ、誰も行かない三筋と小島。
ここで飲み食いしたことのある人は
下町通を自認して差し支えない。
かつての花街・柳橋に棲み暮らしていた頃、
遊び場はもっぱらエンコ(浅草)とノガミ(上野)だった。
ヘロヘロに酔っていてもフラフラと歩いて帰った。
浅草からはだいたい国際通り、たまに新堀通りを南下。
上野だと佐竹商店街を経由して小島を抜けるルートだ。
小島では町中華「幸楽」をたびたび通りすがった。
暖かい時期は店先のテーブルで
常連客がいつもワイワイやっていた。
いつか此処で飲みたいな・・・思ううちに引っ越し。
脳内備忘録からも自然に消滅していった。
その日は浅草橋で所用を済ませ、元浅草へ向かう途中。
「幸楽」に差し掛かり、店先で足が止まった。
数ヶ月前、グルメ雑誌で知ったのだが当店の一番人気は
ラーメンと半ナシゴレンのセット(800円)の由。
どうして町中華がナシゴレンに手を染めたかというと、
常連客にインドネシア出身の青年がいて
彼から手ほどきを受け、メニューに載せたらしい。
これがもしもスペイン人だったら
半パエリャになったハズと記事には書かれてなかったがネ。
ふ~む、ナシゴレンかァ。
この料理はインドネシア&マレーシアの国民食で
独自の調味料を使ったフライドライス、いわゆる焼きめし。
ナシ(飯)をゴレン(炒める)したものだ。
焼きそばならミーゴレンとなる。
シンンガポール赴任時代に何度か食したし、
新橋と銀座にあった「インドネシア ラヤ」、
六本木の「ブンガワン・ソロ」でも食べた。
日本人の食習慣が多様になったせいか、両店が閉じて久しい。
今も東京に残るインドネシア料理の老舗は
知る限り、渋谷の「アユンテラス」1軒となった。
通りすがりも多少の縁、吸い込まれるように店内へ。
カウンターに着いて例のセットをお願いした。
周囲を見渡すと単品の麺類が目立つ。
そりゃそうだろう、女性にはボリューム過多だし、
常連だって毎度同じものというワケにはゆくまい。
そうこうするうち、どんぶりと皿が揃って着卓。
さっそくラーメンのスープを一口。
ん? アッサリしてるのはいいが
出汁の旨みにもの足りなさが残る。
未紹介なれど、稲荷町にあるJ.C.御用達の町中華、
同名異字の「紅楽」に遠く及ばない。
名代のナシゴレンはどうだろう?
=つづく=
新堀・清洲橋・蔵前橋・春日の大通りで囲まれた、
狭い一画に鳥越・三筋・小島の町々がある。
千貫神輿で有名な神社と、情緒を残すおかず横丁で
広く世に知られた鳥越はともかく、
用事がなけりゃ、誰も行かない三筋と小島。
ここで飲み食いしたことのある人は
下町通を自認して差し支えない。
かつての花街・柳橋に棲み暮らしていた頃、
遊び場はもっぱらエンコ(浅草)とノガミ(上野)だった。
ヘロヘロに酔っていてもフラフラと歩いて帰った。
浅草からはだいたい国際通り、たまに新堀通りを南下。
上野だと佐竹商店街を経由して小島を抜けるルートだ。
小島では町中華「幸楽」をたびたび通りすがった。
暖かい時期は店先のテーブルで
常連客がいつもワイワイやっていた。
いつか此処で飲みたいな・・・思ううちに引っ越し。
脳内備忘録からも自然に消滅していった。
その日は浅草橋で所用を済ませ、元浅草へ向かう途中。
「幸楽」に差し掛かり、店先で足が止まった。
数ヶ月前、グルメ雑誌で知ったのだが当店の一番人気は
ラーメンと半ナシゴレンのセット(800円)の由。
どうして町中華がナシゴレンに手を染めたかというと、
常連客にインドネシア出身の青年がいて
彼から手ほどきを受け、メニューに載せたらしい。
これがもしもスペイン人だったら
半パエリャになったハズと記事には書かれてなかったがネ。
ふ~む、ナシゴレンかァ。
この料理はインドネシア&マレーシアの国民食で
独自の調味料を使ったフライドライス、いわゆる焼きめし。
ナシ(飯)をゴレン(炒める)したものだ。
焼きそばならミーゴレンとなる。
シンンガポール赴任時代に何度か食したし、
新橋と銀座にあった「インドネシア ラヤ」、
六本木の「ブンガワン・ソロ」でも食べた。
日本人の食習慣が多様になったせいか、両店が閉じて久しい。
今も東京に残るインドネシア料理の老舗は
知る限り、渋谷の「アユンテラス」1軒となった。
通りすがりも多少の縁、吸い込まれるように店内へ。
カウンターに着いて例のセットをお願いした。
周囲を見渡すと単品の麺類が目立つ。
そりゃそうだろう、女性にはボリューム過多だし、
常連だって毎度同じものというワケにはゆくまい。
そうこうするうち、どんぶりと皿が揃って着卓。
さっそくラーメンのスープを一口。
ん? アッサリしてるのはいいが
出汁の旨みにもの足りなさが残る。
未紹介なれど、稲荷町にあるJ.C.御用達の町中華、
同名異字の「紅楽」に遠く及ばない。
名代のナシゴレンはどうだろう?
=つづく=