静岡西部の城下町、掛川の「甚八」で
うな重(竹)を待っている。
うなぎはそれなりの時間を要するため、
まずは通しておいて、ビールをお願いするがよい。
品書きを見て愕然、何とサントリーモルツの大瓶しかない。
日本酒やウイスキーもなく、本当にこれしかない。
色を失って接客の娘さんに確認するも事態に変化は生じず。
スッパリあきらめたら、緑茶が急須ごとサーヴされた。
掛川は県内有数の茶処である。
11時10分過ぎで客は6人と、さしたる混雑でもない。
15分に配膳された。
かなりの大きさの重箱にうなぎが1と4分の1尾。
飯の量も多く、持つ手のひらにズシリときた。
これなら(梅)でじゅうぶんだったヨ。
脇には糸三つ葉を浮かべた肝吸い。
香の物はたくあん3切れにタップリの白菜漬け。
うなぎにたくあんは無粋だなァと思いつつも
美味かったから黙認する。
活気が出てきた店内を見回すと、
ディスタンスを保ちながらほぼ満席で順番待ちが数組。
やはり人気店なんだネ。
さて、肝心のうなぎは関西風の腹開き。
焼きはというと、地焼きのハズだが
浅い蒸しが入っているのではないだろうか?
さもなくば、こんなにフックラ焼き上がるまい。
蒲焼きの東西の境い目は浜松辺りが定説なれど、
実際は掛川のような気がする。
浜松と掛川の間を天竜川が流れているが源流は諏訪湖。
彼の地でも下諏訪と上諏訪の間が境い目とされている。
うなぎ自体のタチはけっこうだ。
問題はタレにあって、いかんせん甘すぎる。
最後まで気になって仕方がなかった。
加えてキレ味に欠ける粉山椒がまったくの役立たず。
世の中うまくいかないねェ。
滞空45分で会計を済ませると、出入り口が騒がしい。
何となれば外はすごい雨、篠突く雨とはこのことで
食べ終わった客が出るに出られず、”密”になってるヨ。
このとき目に留まったのが玄関脇に貼り出された一筆。
うなぎのいきのよさがうりも ん またせるのがなんてん
おいしくたべてもらえたらまんぞく = 店主独白=
ハハハ、なかなか達者な店主なれど、
この粋な御仁が何でたくあんを出すかネ。
前日の彦根の雨はシツッコかったが
今日のは激しいだけにすぐ止んだ。
掛川駅へと歩きながら、今宵はいずこで晩酌を?
3日続 けてランチ・ビールにありつけず、
我慢も限界間近でありました。
「うなぎの甚八」
静岡県掛川市肴町7-12
0537-22-5638