この日はアテもなく家を出た。
メトロ千代田線・千駄木駅の改札を抜けたら
都心に向かう代々木上原行きが発車したばかり。
ワンフロア下の我孫子行きに乗った。
この駅は上りと下りが横じゃなく縦並び。
地上を走る不忍通りの道幅が狭く、
2線路敷く工事が出来なかったためだ。
両隣りの西日暮里・根津駅も同じ状態。
我孫子まで行く気は毛頭なく北千住で降りた。
別段、食いたいものはナシ。
飲みたいものがあればヨシ。
存在を認知していたが利用したことのない、
「ブーゲンビリヤ」の店先に立ち止まった。
此処はインド料理店である。
素敵な店名が印象に残っていた。
おや? 聞こえてきたのは小柳ルミ子の歌声。
♪ 髪にかざした ブーゲンビリヤ
そえぬ運命(さだめ)に 赤く咲く
海よ 海に流れが あるならば
届けてほしい 星の砂 ♪
「星の砂」は1977年4月のリリース。
作詞は「サンデー・モーニング」の
現司会者、関口宏、作曲はヒデロザの出門英。
ブーゲンビリヤが登場する楽曲をほかに知らない。
あれは1983年4月15日。
東京ディズニーランドが開園するその日に
J.C.はシンガポールに赴任した。
最初の1年、勤務先からあてがわれて棲んだのは
先の大戦で日英の激戦地となった、
ブキッ・ティマ高地にある高級住宅地。
庭付き4階建て一軒家で
一画の共同ながらスイミング・プールまであった。
何とも豪勢なハナシだが
前支店長宅だから、さもありなん。
このとき庭の片隅にブーゲンビリヤが
赤紫の可憐な花をつけていたのを思い出す。
しかしながら、この大邸宅。
あまりに広すぎるのとオフィスから遠いのとで
1年後には今は無きシンガポール大丸の近くに
移り棲んだのだった。
=つづく=