話をロンドンから銀座に戻す。
ポルト酒に似るマデイラ酒のふるさとから
届いたコラルのグラスを合わせ、
さァ、何をいただきましょうか?
メニューを開くと千円均一の3皿が基本のようだ。
フェイジョアーダ、バカリャウ・コン・ナタス、
ポルトガル・チキンの三択で
豚肉と豆の煮込み、干しタラとポテトのグラタン、
ポルトガル風チキンのカレーソース。
三択のポルトガル料理を目にして
聞こえてきたのはシャンソンらしからぬシャンソン、
「ポルトガルの洗濯女」である。
♪ 洗濯女を知ってるかい
ポルトガルの洗濯女を
とりわけセチュバル村の洗濯女たちを
そこは洗い場というより
社交場のようで
女たちが洗濯のリズムに乗って
(訳詞:壺齋散人)
1955年にジャクリーヌ・フランソワが歌い、
時を置かずに越路吹雪がカバーした。
江利チエミの「おてんばキキ」もこの曲だ。
まっ、“三択ランチ”が
“洗濯女”を連想させた次第です。
もっとも「ヴィラモウラ」のランチにはほかに
日替わり、カフェステーキ、カタプラーナがある。
だけども同じ千円の日替わりは
その日その日の出たとこ勝負。
当日はチキンのトマト煮だったかな?
ステーキはちょいと高めで
ブイヤベース風のカタプラーナは
3千円近くして、しかも2人前より。
よって客層の大半を占めるOLサンは三択から択び、
すべて試した常連が日替わりに走ったりしている。
われわれはフェイジョアーダとバカリャウを通した。
フェイジョのオリジナルはもちろんポルトガルだが
この料理はむしろ侵略された、
ブラジルの国民食となった。
世界では侵略者が被侵略地に
食習慣を残して撤退するケースが散見される。
韓国のキンパ(のり巻き)やいなりずし。
ベトナムのサンドイッチ、バインミー。
エチオピアのスパゲッティ。
みなそうだ。
上記の日・仏・伊三国は
それぞれに食文化を誇ってはいますがネ。
=つづく=