2022年5月26日木曜日

第3023話 ポルトガルの三択ランチ (その2)

話をロンドンから銀座に戻す。

ポルト酒に似るマデイラ酒のふるさとから

届いたコラルのグラスを合わせ、

さァ、何をいただきましょうか?

 

メニューを開くと千円均一の3皿が基本のようだ。

フェイジョアーダ、バカリャウ・コン・ナタス、

ポルトガル・チキンの三択で

豚肉と豆の煮込み、干しタラとポテトのグラタン、

ポルトガル風チキンのカレーソース。

 

三択のポルトガル料理を目にして

聞こえてきたのはシャンソンらしからぬシャンソン、

「ポルトガルの洗濯女」である。

 

♪  洗濯女を知ってるかい 

       ポルトガルの洗濯女を

   とりわけセチュバル村の洗濯女たちを

       そこは洗い場というより  

   社交場のようで

   女たちが洗濯のリズムに乗って

       歌ってるんだ         ♪

(訳詞:壺齋散人)

 

1955年にジャクリーヌ・フランソワが歌い、

時を置かずに越路吹雪がカバーした。

江利チエミの「おてんばキキ」もこの曲だ。

まっ、“三択ランチ”が

“洗濯女”を連想させた次第です。

 

もっとも「ヴィラモウラ」のランチにはほかに

日替わり、カフェステーキ、カタプラーナがある。

だけども同じ千円の日替わりは

その日その日の出たとこ勝負。

当日はチキンのトマト煮だったかな?

 

ステーキはちょいと高めで

ブイヤベース風のカタプラーナは

3千円近くして、しかも2人前より。

よって客層の大半を占めるOLサンは三択から択び、

すべて試した常連が日替わりに走ったりしている。

 

われわれはフェイジョアーダとバカリャウを通した。

フェイジョのオリジナルはもちろんポルトガルだが

この料理はむしろ侵略された、

ブラジルの国民食となった。

 

世界では侵略者が被侵略地に

食習慣を残して撤退するケースが散見される。

韓国のキンパ(のり巻き)やいなりずし。

ベトナムのサンドイッチ、バインミー。

エチオピアのスパゲッティ。

みなそうだ。

上記の日・仏・伊三国は

それぞれに食文化を誇ってはいますがネ。

 

=つづく=