2022年5月25日水曜日

第3022話 ポルトガルの三択ランチ (その1)

本日のランチは銀座でポルトガル料理。

相方は半年前にやはり銀座で

シチリア料理をご一緒したM代サン。

前回同様、帝国ホテルのロビーで待合せた。

 

「ヴィラモウラ」は泰明小学校の真向かい。

入口がずいぶん狭いが階下に降りると

かなりのダイニング・スペースである。

その一番奥に案内された。

 

国産ビールは苦手な銘柄につき、

ポルトガル産にする。

ハナからそのつもりでいたけどネ。

コラルはマデイラ諸島で造られている。

1969年創業だから、まだ半世紀の歴史だ。

 

マデイラというと第一感は

クリスティアーノ・ロナウドの出身地。

だがJ.C.には思い当たる人物がいる。

 

あれは1973年11月。

現在ストックホルム在住の旧友・S水クンと

ロンドンに暮らしていたが

二人して文無しとなり、必死に職を探していた。

 

そこで見つけたのが「Wimpy」なる、

ハンバーグレストランだった。

われわれは学生時代にシティホテルで

働いた経験があり、ウエイターとしては一流。

即刻、採用が決まり、勤め始めた。

 

スタッフの面々は実にインターナショナル。

国籍でいうと、イタリア・スペイン・ポルトガル・

トルコ・イラン・バングラディッシュ・日本。

この中で唯一のポルトガル人が

マデイラ出身のマルティン小父さん。

 

英語がまったく話せず、

ディッシュウォッシャーをするしかなかった。

小父さんの休みは週末。

毎週ではないが金曜日になると

店のハンバーガー用バンズを手に取って

店外へ出て行き、ちぎってはまき散らす。

 

店の前は地下鉄のグロスターロード駅だから

たまったものではない。

構内に営巣するドバトの群れが殺到。

ここからがスゴいんだ。

 

小父さん、エサを与えながら物色し始め、

若くて小さいヤツ、言わばヒナ鶏ならぬヒナ鳩を

捕まえたかと思うと、瞬時に素っ首を捻ってグキッ!

テイクアウト用の紙バッグに放り込んでお持ち帰り。

生米と一緒に煮込んで至福のディナーにするんだと―。

 

まっ、コリアンの参鶏湯みたいなモンではあるがネ。

だけど怖れおののくわれら日本人は

小父さんのことを

“ピジョンキラー・マルティン”と呼んでいたのサ。

 

=つづく=