案の定、あぶらぼうずは美味の極み。
見た目はお世辞にも良いとは云えず、
むやみに馬鹿デカく醜いサカナなれど
この旨さはいったいどこから来るのか?
天はサカナにも二物を与えぬものらしい。
脇に添えられた釜揚げしらすがまた好し。
緑の実山椒がちりばめられて
わが家の塩山椒とまったく一緒。
小さな鰯の稚魚と山椒の相性には
驚くべきものがある。
ここで二人は清酒に切り替えた。
店主オススメの佐渡の雅楽代(うたしろ)。
雅楽と書いて”うた” と読ませる。
そう云やあ、江戸時代にいましたネ。
徳川家康の重臣に
酒井雅楽頭(うたのかみ)という人物がー。
もっとも若い頃は雅楽助だったけど。
この酒が実に美味かった。
味わいに奥行きがあり、鼻腔に余韻を残す。
冷酒のグラスはすぐに空いてお替わり。
先刻から気になっていた、
鰹(かつお)のニンニク醤油を追加する。
血合いなどすべて取り除いた12切れは
深紅の色合いも鮮やか。
これにはニンニクエキスを浸出させた、
醤油に加えて真っ黒に染まった、
ニンニクそのものスライスも。
鮪にはわさび、河豚ならポン酢、
鰹にはニンニクが不可欠である。
続いて笠子(かさご)の酒蒸しあんかけ。
餡には焼き茄子とわらび。
白身が引き立つ一品となっていた。
J.C.は焼酎のロックに移行する。
薩摩の赤兎馬(せきとば)紫は
黄金千貫の代わりに紫芋を使用。
ふくよかな滋味が舌に心地よい。
すっぽん雑炊、北海浅利の炊き込み、
鰹手ごね寿司など、締めのごはんものが
揃ってはいてもすでに二人はマンのプク。
飯の代わりに藻屑蟹の味噌汁を所望した。
お勘定は22600円也。
諭吉翁3枚を予想しただけにこれは事件だ。
「所さん! 事件ですよ」。
ハハハ、2.26だけにネ。
とにもかくにもこれにて
こち亀タウンの一番星が決定したのです。
「いちふじ」
東京都葛飾区亀有3-15-10
03-5629-1330