恵比寿「ル・リオン」のサラダはよかったが
いかんせんビールが飲みたい。
表のバス通りに出るとバスが停まった。
反射的に乗り込んだのは田町行きである。
よく立ち寄る駅前の立ち飲み酒場をガマンし、
三田から浅草線で一駅先の大門まで歩いた。
増上寺ではなく芝大神宮に一礼。
立派な神宮なのにいつも参拝客が少ない。
界隈をぶらぶらして大江戸線に乗った。
降りたのは新御徒町。
日本で二番目に古い(東京最古)、
佐竹商店街を流すも「白根屋」無きあと、
翼を休める店が無くなって淋しい。
プラタナスがパリのリュクサンブール公園を
連想させる西町公園のベンチで一休み。
すぐに立ち上がり、歩き始めた。
こんなことをしている場合じゃないんだ。
ガスの補給をせねばならない。
すると右手に「小倉庵」の袖看板が見えた。
最近は南大塚の「小倉庵」にハマり、
何度もおジャマしている。
同じ流れを汲む店に違いない。
よい機会とばかり、引き戸を引いた。
女将と思しき初老の女性が迎えてくれる。
「ビールの銘柄は何ですか?」
「生は無くてエビスなんですが・・・」
ガッビ~ン!
昼間のエビスはしょうがない。
何せ恵比寿の地元だからネ。
それが何でまた上野でエビスなんだ。
せっかくエビス顔になったのに
また曇っちゃったじゃないかー。
ビールでかつ煮を目論んでいたが断念。
もりそばをわびしく注文した。
太いのや細いのや不揃いのそばは二八そば。
コシがあり、香りも立ってなかなか。
さすが自家製粉だけのことはある。
辛口のつゆにも好感が持てた。
飲みものは冷水だけだけどネ。
会計時、女将さんに訊ねた。
「お店は古いんですか?」
「今年で55年目です」
「すごいなァ、ずっとこの場所で?」
「いえ、暖簾分けでー」
「じゃ、早稲田の山吹町から?」
「ええ、本店からですヨ」
都内に何軒かある「小倉庵」のルーツは
すべて早稲田の隣りの山吹町。
55年目だから54年前の1970年。
ん? 東京駅丸ノ内南口でお巡りに
職質を受けた年じゃないかー。
んん? J.C.が早稲田に入った年だヨ。
これを単なる偶然とは思えな・・・
いや、単なる偶然であろうヨ。
あの夏、巷には辺見マリ「経験」と
由紀さおり「手紙」が流れておりました。
「小倉庵」
東京都台東区東上野3-6-6
03-3832-7743