2022年8月31日水曜日

第3092話 昼は豚 夜はチキンの トンチキぶり (その1)

メトロ丸ノ内線を新高円寺で降りた。
JR高円寺駅へと続くルック商店街を往く。
途中、右折して高円寺(お寺です)方面へ。
本日の昼飲みは5年ぶりの町中華「七面鳥」。

何度もおジャマしているが昼に来るのは初めて。
独りで来るのも初めて。
相方と夕刻から飲み始めるのが常なのだ。

見慣れた細いコの字カウンターは
13時を回ってもいっぱいの盛況ぶり。
入店して目の前、暖簾を真後ろに背負う、
逆お誕生日席にどうにか収まれた。

一度腰かけてからすぐさま起立。
冷蔵庫を開けてドライ大瓶&グラスを取り出し、
栓抜きで抜栓、一連の動作をすべて自分でやる。

席に戻ると、すかさず3品のつまみが供された。
飲む客には必ずサービスされるもので
今日はポテサラ、イカゲソ磯辺揚げ、
きゅうり浅漬け&たくあん、いいですネ。

J.C.にはこれでじゅうぶんだが、そうはいかない。
来れば頼むの酢豚(780円)を発注した。
訪れた町中華&本格中華は都内に数あれど
酢豚のマイベストは「七面鳥」にトドメを刺す。

濃い目のトロみに大き目のもも肉が8塊もー。
豚だけにこれがホントの猪八戒。
あとは王道の玉ねぎ・にんじん・ピーマンのトリオ。
他店にありがちなパイナップルは参加不可。

うん、いつ来ても美味いや。
倍額の1500円でも注文しちゃうネ。
ボリュームがあるから他の料理は頼めない。
周りを見てると一番人気はオムライス。
二番がニラレバ炒めで酢豚はその次だ。

大瓶2本を速やかに空け、お勘定は1880円也。
浅草・上野にあったなら行きつけ間違いなし。
池波正太郎翁も通っただろうな。
いやはや下町以上に下町ックな店である。

それにしても「七面鳥」なる屋号。
珍妙を超え、奇天烈ながら意外とあるんだ。
川崎市・武蔵小杉のほかに
台東区・鶯谷には「七麺鳥」なんてのも。

今、思い出したのは北区・王子の居酒屋「やまに」。
此処には七面鳥ならぬ、九官鳥が1羽居た。
それが客の口真似をして
「スイマセン!」
「スイマセン!」
ハハハ、連発してたっけ、ひょうきんなヤツよのぉ。

これにより居酒屋内で発せられる言葉は
圧倒的に「スイマセン」であることが立証された。
九官鳥の居る店舗は後にも先にも「やまに」だけ。
ひるがえって「七面鳥」はただの1軒もない。
わが命尽きるまで遭遇はないでしょうな。

「七面鳥」
 東京都杉並区高円寺南4-4-15
 03-3311-5027

2022年8月30日火曜日

第3091話 路地のほとりのティールーム

♪   あなたを待てば 雨が降る
  濡れて来ぬかと 気にかかる
  ああ ビルのほとりのティールーム ♪
     (作詞:佐伯孝夫)

フランク永井の「有楽町で逢いましょう」は
1957年7月のリリース。
百貨店そごうのキャンペーンソングが
とてつもない大ヒットとなった。

それはそれとして
その日は朝から雨がしとしと降っていた。
上がるのを待って、昼めし前の散歩を
文京区・小石川の桜の名所、播磨坂でスタート。
春日通りを真っ直ぐ、言問通りにぶつかるとき、
いきなり大粒が降り出した。

こりゃたまらん、角のローソンに逃げ込む。
ビニール傘を買い、雨の中を散歩の続き。
丸ノ内線・新大塚駅前から下る、
細い路地のほとりにティールームがポツンと1軒。

ん? ミートソース・シナモントースト付き?
妙な取り合わせだな、こんなの美味いのかい?
ダメ元OK、「モーニング・サン」の取っ手を引いた。
初老のご夫婦が切り盛りする店内は小ぢんまり。
ドリンクはアイスコーヒーを択ぶ。

着卓した皿にはスパゲッティの上に
焼かれた6枚切り食パンが1枚乗っていた。
これはトースト付きじゃなくてトースト乗せだネ。
レタスのサラダは醤油ベースの和風ドレ。

ソースが緩く、パンチに欠けるため、
パルメザンを多めに振り、
途中からタバスコも参戦させる。
シナモンとの相性は案じたほど悪くはない。

外の雨はすっかり上がってカンカン照り。
JR大塚駅まで歩き、錦糸町行きのバスに乗る。
さっき歩いた通りを逆に戻ってゆく。
御徒町で降り、「吉池」の店外に特設された、
臨時ビア・スタンドに直行した。

例によってバイトの娘さんに
「泡のぶん目減りして構わないから泡ナシでー」
「ハイ、泡ナシですネ」
彼女が注いでくれたプラコップは百点満点。
目減りなどせず、泡1ミリのいっぱい、イッパイ。
うん、キミは好いコだ、いいお嫁サンになれるヨ。

そうして晩酌用つまみの調達。
おお、今日は珍しいサカナが揃ってる。
カンダイ(コブダイ)とコシナガマグロで
迷いに迷う白身と赤身の競い合い。
頭ん中は紅白歌合戦状態である。

勝利したカンダイは額に大きなコブのある、
異様な見てくれとは裏腹に繊細な美味しさ。
半分強残し、昆布〆を仕込んだ。
あと二晩は楽しめるでしょう。

「モーニング・サン」
 東京都文京区大塚5-10-9
 03-3941-3436

「吉池」
 東京都台東区上野3-27-12
 03-3831-0141

2022年8月29日月曜日

第3090話 再び「丘」に登った

予感した通り、また「丘」に登ってしまった。
今回は唯一のタイトルロール、ベルクドッグをー。
一番シンプルなホットドッグだ。
ケチャップ&マスタードを問われ、
マスタードのみお願いすると
10円チャージされて300円。

それでも上質のソーセージに
パンも美味しいから割安感あり。
サッポロ樽生とのコンビネーションもよろしく、
軽快なランチとなった。

このあとは思い出横丁の止まり木に止まるつもり。
誰が言い出したのか、悪しき俗称はしょんべん横丁。
前回通り抜けたのは土曜の昼過ぎで
多くの店が開いていたが
今日は平日、ほとんど閉めている。

そんななか、町中華「岐阜屋」の並びに
青地に白く”やきとり”と染め抜かれた、
暖簾を掲げる「藤の家」があった。
ガラス越しにのぞくと先客は二人、余裕である。
引き戸を引いて二人の間に割って入り、
ドライの大瓶をお願いした。

独りで切り盛りする女将が 
「メニューがなくてごめんなさいネ」 
「やきとり主体でしょ?
  取り混ぜて4本焼いてー」 
「タレ? 塩?」
「ええっと、全部タレでー」
ハツ・レバ・砂肝・正肉が焼き上がったが
ハツと砂肝は塩がよかったな。

J.C.の入店の際、奥にズレてくれた常連サンが
ひっきりなしに女将に話しかける。
「代々木は廃れたなァ、寂しいねェ。
 赤羽はスゴいわ、呑ん兵衛だらけだ」
「ふ~ん、そうなの」

話題が都立高校の悪しき学校群制度に及び、
「オレはさァ、新宿高校に行きたかったんだけど
 結局は赤城台なんだ」
ここでJ.C.、会話に参戦、いや、マイッたヨ。
常連サンとのハナシが弾みに弾み、
30分程度で切り上げる予定が
2時間半の長逗留と来たもんだ。

大瓶3本にとどまらず、白ホッピーセットを追加。
外は1本だけだが中はタップリあった。
高校の化学の授業で使う、
ビーカーみたいな容器になみなみと。
これじゃハシゴはムリだわ。

新宿西口からは山手線、新宿線、大江戸線、丸ノ内線、
どれでも帰れるが、ことごとくワン乗り換え。
帰宅したものの、どれに乗ったか忘れちまいやした。
バッカじゃないの?

「ベルク」
 東京都新宿区新宿3-38-1ルミネエストB1
 03-3226-1288

「藤の家」
 東京都新宿区西新宿1-2-14
 03-3343-3060

2022年8月26日金曜日

第3089話 旧東海道に長崎の味

ビールとヴルストに満足し、新宿三丁目へ歩いて
都営新宿線に乗り、市ヶ谷下車。
靖国神社の脇を抜け、九段下の昭和館にやって来た。
理髪の予約までまだ時間がある。

この日は懐かしのニュースシアターに寄らず、
3階に上がって特別企画展。
「九段会館がみた昭和」と「お菓子の記憶」を
懐かしく楽しんだ。

隣りのスーパーで缶ビールを調達後、サロンへ。
K子チャンのコリアン・ハズバンドに
シャンプーされながら韓国料理談義に花を咲かせた。
40分で理髪終了。
かむろ坂下から大井町行きのバスに乗る。

京急・新馬場駅前で降り、
品川に向かって旧東海道を往く。
歩き始めてほどなく、
4人が店先に並ぶ町中華に差し掛かった。
4カ月前にも通った道筋、存在は認知している。
時刻は16時58分。
17時開店なんだろうな、後尾に付いた。

時報代わりの「夕焼け小焼け」が
商店街に流れるのと同時に「登龍」の扉が開く。
次から次へ客が詰め掛け、開店15分で満卓。
そんなに旨い店なのか?
メニューを開き、人気の一因が判った。
とても安いのだ。

豊富な品揃えの中、何種類かある焼きそばの
一番最初に長崎皿うどん(570円)があった。
初めと終わりで味わいが変化する皿うどんは好き。
ビールの友にも打ってつけだ。

神奈川寄りの品川区・大田区は
キリンの勢力圏らしく、中瓶は一番搾り。
サービスの煮含めたシナチクをアテに
飲みながら待つこと5分、長崎名物が着卓する。

豚小間切れ・白菜・玉ねぎ・にんじん・小松菜・
もやし・キクラゲのあんかけには
辛うじて小海老1尾とモンゴイカ1片。
本場の皿うどんに一味足りないのは
必須アイテム、かまぼこの不在が響いている。

そしてあんが緩いというか、
汁っ気が多いというか、ヤケにつゆつゆしい。
先日、白山下で食べた博多名物、
焼きラーメンみたいな感じだ。

久しぶりにビッグなフル・ポーションを平らげ、
腹いっぱいで固形物はもう入らない。
品川から山手線に乗り、立ち寄り先ならぬ、
立ち飲み先を思いあぐねていた。
今宵は新橋駅前にしましょうか?

「登龍」
 東京都品川区北品川2-4-16
 03-3450-0911

2022年8月25日木曜日

第3088話 ミュンヘン名物 白ソーセージ

今日は7週に1度の理髪日。
軽いランチにガス注入を兼ね、
嫌いな街、新宿に乗り込んだ。
サクッと飲んでつまめる、
ジャーマン・パブの情報を得たからネ。

思い出横丁南側の小ガードをくぐり、
駅ビル・ルミネの地下にもぐった。
すぐ右手にFOOD POCKET なる一画がある。
此処に信州そば「本陣」と
「ベルク」が相対していた。

入口のフォトメニューを念入りにチェック。
おっと、好物の白ソーセージ、
ヴァイスヴルストがあるじゃないの。
このミュンヘン名物が
1本390円+税は良心的な値付けだ。

あれは1997年の夏。
ミュンヘン市庁舎近くのレストランで
初めてこのソーセージを食べた。
添えられたハニー・マスタードと
細挽きのきめ細やかさが深く舌に残った。
以来、J.C.はウインナーすら細挽き派。
太挽きをあまり好まない。

時はさらにさかのぼり、1971年春。
初めての欧州旅行でハンブルグ、
ハイデルベルグを経てミュンヘンに入った。
当時は貧乏学生の貧乏旅行。
レストランなど夢のまた夢でありました。

どこでももっぱら中央駅や街角の廉価なスタンドで
ソーセージとじゃが芋ばかり。
あとはレバーケーゼ(レバー入りソーセージ)。
それでも、ソ連経由の旅につき、
北欧とドイツの食事はとても美味しかった。
ビールだけは欠かさずにタップリ飲んだしネ。

さて「ベルク(丘)」。
サッポロ樽生のラージとヴァイスヴルスト1本。
締めて924円を支払い、
ヴルストはこれから茹でるってんで
ポケベルを手渡される。

出来上がりは両側に取っ手の付いた、
タースカップの中でとぐろを巻いておった。
ヒタヒタの透明なスープには細かく刻んだ、
トマト・ピーマン・アーリーレッドとレンズ豆。
ほとんど味がないから
スープというより茹で汁ですな、これはー。

ヴルストはとても良いデキ。
この店は間違いなく使えるゾ。
これからは好きでもない新宿を
ちょくちょく訪れそうな予感がしています。

「ベルク(BERG)」
 東京都新宿区3-38-1ルミネエストB1
 03-3226-1288

2022年8月24日水曜日

第3087話 あのとき あの池のほとりで

こんな駅名じゃ四十七士が迷うだろ!
さんざ揶揄された悪評高き高輪ゲートウェイで
JR京浜東北線を降り、昼めし前のお散歩スタート。

左は高輪泉岳寺、四十七士の墓所。
伊皿子坂を上りつめると、そこから下りは魚籃坂。
やって来たのはかつて
東急東横線・学芸大にあった日本そば「夢呆」だ。

サブタイトルの”あのとき”は2001年2月。
窓から眺める目の前に
碑文谷公園の池が拡がっていた。
6年前、老女のバラバラ死体が発見された池である。

麻布通りに面する現在の店は
あのときと打って変わってやけに即物的。
正午過ぎじゃ待たされるかな?
と思いきや、すんなり案内された。
2階席があるため、客のさばきはスムース。

ビールはサッポロ赤星中瓶。
品書きをチェックすると
平日昼限定セットが圧倒的にお食べ得。
3種のそば&3種のどんぶりから
1品づつセレクトするシステムは
そばが、かけ・たぬき・ぶっかけ(うどんも可)。
どんぶりは、玉子丼・かき揚げ丼・そぼろ丼。

此処でJ.C.、ミステイク。
女将サンに訊いた。
「冷たいごはんは・・・」
「冷たいごはんは無いっ!」
「あっ、おそば、おそば。
 おそばはぶっかけだけですネ?」
「そうですヨ」

いきなり叱られた。
唯一冷たいぶっかけと、かき揚げ丼をお願い。
ビールのアテにサービスの煮あさり煮が供される。
うれしいなァ、以前たびたび利用した、
「室町砂場」を想起させるが
あちらは有料の一品料理だもの。

ぶっかけには太めの切り海苔&貝割れ。
薬味はさらしねぎ&似非わさ。
かき揚げは小海老・玉ねぎ・にんじん。
トマト&玉ねぎサラダに和伊折衷風ドレッシング。
そしてお新香が薄切り大根の塩漬け。
サラダ、新香ともにチマチマせず、タップリだ。

コシの強いそばに弾力があり、
つゆは甘みを排した辛口。
丼つゆは甘辛強めの下町風だった。

老弱織り交ぜて女性の単身客が目立つ。
丼付きセットでは重いためか、
天せいろ、穴子天せいろ、ちらしなど、
割高の種物を通す女性が多い。

1760円の支払い時、女将と言葉を交わす。
訊けば、碑文谷を閉めたあと、
3年のブランクを経て、この地で10年目とのこと。
窓の外には池の代わりにタクシーが駐車中。
社名は秘すが入店時から運チャン爆睡のまんま。
いったいどんだけ眠るんだ?

「夢呆」
 東京都港区高輪1-1-12
 03-6459-3973

2022年8月23日火曜日

第3086話 稲荷鮓 切れて団子と 抹茶かな

柳橋で洋食の翌日、訪れたのは
文政2年(1819)創業の「羽二重団子 本店」。
荒川区・東日暮里は芋坂下、団子の老舗である。
本件は正岡子規つながり。
彼は終の棲家に近い当店の団子を慈しんだ。
店頭のボードには店の歴史とともに子規の句がー。

芋坂も団子も月のゆかりかな

”女見送る柳橋”よりはずっといいが
それでもイマイチ。
彼の秀句となれば、
第一感は”鐘が鳴るなり法隆寺”だろう。
子規が団子を詠んだ句はもう一つ。

花の雲言問団子桜餅

アタマは崇敬する芭蕉の句から拝借し、
あとは向島の言問団子と
向かいの長命寺を並べただけ。
何だかなァ、まっ、いいかー。

本日の目当ては
「人形町 志乃多寿司」の海苔巻&稲荷ずしに
ミニ団子を添えたランチだったが
”好評につき本日分は売切れました”とのこと。

仕方なく抹茶にミニ団子2本付きのセットをー。
抹茶なんて何年ぶりだろう。
平たい団子2個付けは醤油と漉し餡が1本づつ。
生醤油を一刷毛した焼き団子。
餡子のぶん、中身が小さくなる餡団子。
比べたら餡に軍配かな。

羽二重のようにきめ細かな団子が
ネーミングの由来だが他店と変わるものでもない。
サッと食べて抹茶をいただき、
10分滞空して支払いは770円也。

帰りは店に向かって右隣りの芋坂を上った。
此処は旧王子街道の起点でもある。
すでに暗渠となった音無川に沿う、
風光明媚な道筋だったいう。

界隈で自然薯(長芋)がたくさん取れたそうだ。
ほどなく何本もの線路を跨ぐ、芋坂跨線橋。
西詰足下に芋坂児童遊園。
いつ来てもほとんど人影がない。
児童なんか見たことないネ。

谷中霊園の東端と民家の間をすり抜け、
御殿坂を左折して夕焼けだんだん。
谷中銀座のスーパーでわさびを買い足し、
帰宅後、早めの晩酌。
だって団子屋にビールがないんだもん、

「羽二重団子 本店」
 東京都荒川区東日暮里5-54-3
 03-3891-2924