2015年11月6日金曜日

第1224話 YOKOHAMA is Beautiful ! (その8)

ほどなく灯ともし頃を迎える港町・横浜。
元直属部下のA子とバッタリ遭遇したのだった。
10年近く前にも数寄屋橋の書店で同じことがあったから
これが二度目である。

彼女の同伴者は男女一人づつ。
紹介されると、女性は上方から遊びに来ている友だち、
男性は現在のダンナであった。
現在の、ということは、以前のダンナではない。

三年半前にA子と飲んだときは
前のダンナとシアワセな日々を過ごしていたハズ。
余計なお世話ながら、身軽なモンだなァ。
いや、実に若いオンナの実生活は波乱に富んでるんだねェ。

そのA子、J.C,を今のダンナに紹介した際、
「元上司でワタシにお酒の飲み方教えてくれた人なの」―
言うに事欠いてトンデモないことを言いいやんの。
こちとら冷や汗かいちまったじゃないか!

それはともかく、
「野毛に行くんだったら『もつしげ』に寄ってみてくださいな」―
焼きとん好きもちゃあんとお見通しであった。
マイッちゃうなもう。
立ち話もほどほどに近々の再会を約して別れた。

野毛の町はJR桜木町駅をはさんで
みなとみらいの反対側に拡がっている。
横浜に来たときは中華街に行かなくとも
野毛を訪れぬことはまずない。
それほどに愛着を持っているのだ。

A子のオススメに従って「もつしげ」を探し当てた。
本店と2号店が向かい合っている。
ここは本店でしょ。
東京の下町に散在する焼きとん屋の雰囲気とは異なり、
好きなタイプの店舗ではなかったが
とにかく入って飲んで食べてみなけりゃ始まらない。

あいにくカウンターは満席。
相方のM代サンと二人、小卓に落ち着いた。
江戸前の鮨・天ぷらは絶対にカウンター。
酒場でも居酒屋でもラーメン屋でさえも
カウンターに座るのが好きだ。
まっ、今宵は致し方あるまい。

日本のビール生誕の街にしてキリン発祥の地、横浜。
ほとんどの飲み屋がキリンしか置かない。
この点、アサヒの浅草とまことに対照的。
よってキリンラガーで乾杯と相成った。
郷に入れば郷に従うほかに手立てがないのだ。

=つづく=