2011年10月4日火曜日

第154話 恋は小岩ではしご酒 (その3)

なかなか酒に行き着かなかった”恋は小岩”のはしご酒。
ようやく1軒目の「大竹」にやって来た。
ここは小岩随一の男の酒場である。
16時半開店のところ、到着時刻は17時ちょい過ぎ。
すでに満席に近く、入口で少々待たされる。
これは順番待ちというより、店内の交通整理のためだ。

ほどなく奥のエッジに近いカウンター席へ。
この店はカウンター向かい合わせで両サイド10席に
それぞれのエッジが1席ずつ。
あとは小上がりが3卓と計30席ほどのキャパである。
おっと、外のテーブルで飲んでる客が数人いたな。

ビールはサッポロのラガー、人呼んで赤星。
まだ暑気の去らぬ季節柄、
瓶よりも生を飲んでる客がほとんどだ。
生を1杯飲ったあと、酎ハイに移る傾向が見てとれる。
かたやハナから酎ハイ派もけして少なくない。
スタッフはこぞって愛想がよく、
一見客が酎ハイを注文すると、
「氷は入れますか、入れませんか?」―親切に訊いてくれる。

野菜炒めみたいな料理に
生のトマトが添えられた皿を前に飲む客が目立つ。
ありゃいったい何であろうか?
謎はすぐに解けた。
まず注文品の冷やしトマトが運ばれたあと、
2品めのホルモン焼きかレバニラ炒めが到着し、
置くスペースに困って一緒盛りにしちゃうのだ。

上記の2皿はネーミングこそ異なれ、見た目はほぼ同じ。
野菜炒めが豚もつ入りか豚レバ入りかの違い。
1種類2串からの焼きとんもけっこうだが
この2皿はそれ以上のオススメで
ボリュームがあって野菜の補給にうってつけ。
ただし、独りのときは持て余す。

そして名代はじゃが芋が乗っかった煮込み。
もつの煮込みに大根やにんじんは邪道だぜ、
そう決め込んで譲らぬ御仁は少なくない。
かく言うJ.C.もその口なれど、
なぜか「大竹」のじゃが芋は許せてしまう。
保守派・守旧派をうならせるだけの説得力がこれにはある。

生ビール・瓶ビール・酎ハイと飲み継いでいささか酩酊気味。
この日はヤケにアルコールの回りが早い。
隣りに座ったオバさんはもっと早く、すでに大トラと化している。
からみ酒じゃないのが救いだが仕切りに話し掛けてくる。
いや、参っちゃうなァ。
これがうら若き美女、
いえ、ベツに美女なら若くなくともよいけれど、であったなら
「まあ、お近づきのシルシにご一献!」となるべきところ、
そんなのこんな場所に居るわきゃないヨ。

いつの間にか女将に代わって
看板娘と思しきお姐ちゃんが目の前に登場。
出会いがしらにその流し目と目線が合ったとき、
笑みを一つだけくれたが
あとは常連客としきりにゴルフ談義だ。
世の中不景気とは聞くものの、
猫も杓子もいまだにゴルフでっか。

さて、そろそろ切上げて
駅の西から東に廻り、もう1軒と参りましょう。
頭の中で再び藤圭子が歌い出した。

♪ よってらっしゃい
    よってらっしゃい お兄さん ♪

=つづく=

「大竹」
 東京都江戸川区西小岩1-19-26
 03-3658-2179