2011年10月6日木曜日

第156話 近頃ハテナの神楽坂 (その1)

今も東京に残る数少ない花街、
神楽坂の様子がどこか変ンだ。
お勤めにせよ、お遊びにせよ、
毎日出掛ける人は異変に気づかないかもしれない。
異変というのはいささか大げさだろうが
たまに訪れる者には何となく判る。

じゃ、どこが変ンなんだ?
そう問われても、ここが変ンだヨとは応じにくい。
こればかりは肌が無意識に感じる微妙なところ、
具体的に説明はしづらい。
ただ、いつからこうなったのかというと、
神楽坂の料亭が舞台のTVドラマが脚光を浴び、
オバタリアンが徒党を組んで街を闊歩し始めた頃からだ。

古くから伝統の破壊者(一歩譲って革命家)は
若者&女性と言われ続けてきた。
さように神楽坂を侵食したのは
オバちゃん、ヤング(死語か)、外人サンだろう。

今のご時勢、この街の裏筋をそぞろ歩いて
頭上から三味(しゃみ)の音色が
チントンシャンと降り落ちる幸運はまずない。
現在、定期的に訪れる神楽坂の飲み食べ処は
本多横丁からもう一つ入った「K.S寿司」だけになった。
ほかに再訪する店は皆無も同然だ。

ホンの数年前までマイ・フェイヴァリット・タウン・イン・東京は
一に浅草、二に銀座、三、四がなくて、五に神楽坂だった。
それがここ1~2年、一番、二番は不動なものの、
五番は御茶ノ水に取って代わられた。

御茶ノ水といってもJRの駅周辺だけでなく、
南は小川町、西は神保町に至るエリアだ。
界隈には地番のアタマに”神田”を冠する町が多いが
これはある意味、千代田区の愚かな施政方針。
とにかく”神田・何某”、あるいは”何某・神田”が多すぎる。
東神田の東端から西神田の西端までの距離は
驚くなかれ、中央区・日本橋から港区・新橋に匹敵する。
しかも皇居を擁する、あの狭い千代田区内でっせ!

とまれ、最近は疑念ばかりが思い浮かぶ神楽坂だが
坂の中腹にあるフレンチ・ビストロ、
「ル・ロワズィール」をしばらくぶりで訪れた。
かねてより気に入りの店である。

友人のカガクくんがタマには
ナイフ&フォークを操ってみたいなどと、
気の利いたセリフを吐きやがったので連行した。
連行はしたが、もちろん手錠は掛けていない。
常日頃、貴重な情報を授かっている立場上、
彼のリクエストには抗えぬものがある。
でもって、エッチラオッチラ出向いたのでござる。

=つづく=