2011年10月27日木曜日

第171話 甲斐の国にも桂川 (その3)

猿橋を渡り返して大月へは徒歩で向かった。
大月の町は桂川の南側に位置するが
地形的にそちらは道路が大きく迂回していそうで
川の北側、いわゆる左岸を歩んだ。
通るクルマの数は少なく、歩行者のジャマをしない。
いったん猿橋駅に戻って線路沿いを行くのは
何となく遠回りのような気がして
桂川をすぐには渡らず、ひたすら西へ西へ。

途中、猿橋と大月の中間点辺りにて強瀬橋を渡ると、
南詰たもとに小滝が流れ落ちている。

小さいながらもなかなかの水勢

帰宅後、調べてみたら
丘の上にある駒橋水力発電所の余剰水を流す人口滝だった。
明治40年(1907年)開設のこの発電所は
東京に遠距離送電した最初の水力発電所とのこと。

滝の脇にある勾配の急な小道を登り切ると、小さな踏切に遭遇。
れっきとしたJR中央線の踏切だが
日にそう多くの人々が通行するとも思えない。

到着した大月の町はやけに殺風景だった。
一時期は織物産業で栄えたものの、その後衰退の一途をたどり、
ここ20年で人口が15%も減少し、3万人を割り込んでいる。
中央線の南側だけに開けた町は
ホンの15分ですべてを把握できるほどだ。

目当ての食堂「うづき」はすぐに見つかった。
以前は国道沿いにも支店があったが
飲酒運転取締り強化のあおりを食い、
客が激減して閉店の憂き目を見たとのこと。
親切な女将と実直な店主、二人だけで切盛りしている。

ビールの大瓶と餃子(400円)に
期待のチャーシュー(700円)をお願い。
「え~っと、チャーシューはもう少し時間が掛かるかな?」―
女将の言葉から現在進行形で焼かれていることが判る。
いいでしょう、いいでしょう、別に急ぐ旅ではないし、
気持ちよく余裕でお待ちしましょう。
第一、焼き立てにありつけるなら、それに越したことはないもの。

まず登場した焼き餃子

ほほう、カタチ、色つや、焼き加減、整列ぐあい、
どれをとっても非の打ち所ナシ!
われわれクラスともなると、
エッ? どんなクラスだ! ってか?
まァまァ、聞き流しておくんなせェ。
とにかくわれわれクラスは
見ただけで食べる前から美味を確信するのである。
何も付けずにパクリとやったら案の定、花マルだった。

続いて運ばれたチャーシュー

いや、参ったネ、もろ手を挙げて降参だネ。
コイツはすごいや、生涯ベストスリー間違いナシ!
タイプは異なるが「中国飯店」グループのそれに匹敵。
値段はこっちがずいぶん安いのもありがたい。
名ばかりの高級店など足元にも及ばない。
何たってチャーシューは叉焼だかんネ。
煮豚なんざ、もう金輪際、食いたかねェ!

=おしまい=

「うづき」
 山梨県大月市御太刀1-1-1
 0554-23-1510