2014年12月12日金曜日

第989話 イスキアの光よ パリの影よ (その3)

20世紀最高のディーヴァ(歌姫)と誰もが認める、
マリア・カラスはギリシャ系米国人。
生まれはニューヨーク・クイーンズのギリシャ人街である。
マンハッタンからクイーンズボロー・ブリッジを渡り、
道なりに左折してゆけば、ほどなく到着の近場だ。
近いといってもさすがに徒歩ではなくクルマでネ。

J.C.は橋のすぐそば(橋の下に非ず)に棲息していたこともあり、
ギリシャ料理を食べたくなると、気軽に愛車を走らせた。
何せ10分掛からないんだもんネ。

橋の下では島全体が医療施設といってはばからない、
ルーズベルト・アイランドがイースト・リバーに浮かんでいる。
この島へはセカンド・アヴェニュー(二番街)から
ケーブルカーを利用しないと行き着けない。
すでに20年も以前のTVドラマ、
「ニューヨーク恋物語PARTⅡ」にはたびたび登場した。
確か、高島政宏か三田寛子が棲んでいたハズ。

さて、グリーク・ディストリクトには当然、
グリーク・レストランが目白押し。
本来、J.C.はギリシャよりトルコの料理が好きだが
魚介類となると海洋国、もとい、海運国・ギリシャに一日の長がある。

ちなみにカラスの二番目の夫(事実上の)は海運王・オナシス。
そしてJ.F.ケネディ大統領夫人だった、
ジャクリーンの二番目の夫もオナシス。
サングラスのおとっつぁんは莫大な財力をもって
超セレブなレディを渡り歩いた感、否めず。
おっと、ハナシが脇道にそれると、
とどまるところを知らない自分を反省!

映画「永遠のマリア・カラス」は
カラス晩年の隠遁生活を中心に綴られる。
おのれの人生をはかなんだカラスはパリに逼塞(ひっそく)しており、
私生活でも親しかったゼッフィレッリ監督が
あえてその暗い影に光を当てた。
史実を多少フォローしてはいるものの、
ほとんどがゼッフィレッリの想像に基づく創作である。

カラスを演じたフランス女優、ファニー・アルダンの演技が輝かしい。
殊にジョルジュ・ビゼーのフレンチオペラ、「カルメン」のシーンは圧巻。
今のカラスの映像に絶頂期の声をかぶせて
映像化を目論むプロデューサーが主張する。
世界でもっとも人気のあるオペラは「カルメン」であると―。
それをかつて貴方(カラス)はただの一度も演じてないと―。
フ~ム、そんなものかいな。

1990年代、メトロポリタン・オペラハウスに足繁く通った。
アメリカン、いや、少なくともニューヨーカーの間で
絶大な人気を誇った演目はプッチーニの「ラ・ボエーム」と
モーツァルトの「魔笛」が双璧だった。
これはメトの広報担当お二人に聞いたハナシだから間違いはない。
あれから20年を経た現在ははたしてどうであろう。

=つづく=