2014年12月3日水曜日

第982話 巨星は星の彼方に (その7)

巨星・高倉健の映画をたどっていたらとうとうここまで来た。
われながら好きなこととなると、まったくもって止めどがない。
そのあいだに文太兄ィまで亡くなってしまった。
あらためてお二人のご冥福を祈りたい。
合掌。

「駅 STATION」のつづきだ。
大晦日の夜、桐子の店に現れた三上。
二人だけで燗酒を酌み交わす。
まるで何年も連れ添った夫婦みたいに―。

TVでは紅白歌合戦がたけなわである。
流れるのは八代亜紀の「舟歌」。
紅白に限らず、「舟歌」はたびたび流れる。
ちょいとばかりクサいんじゃないかと思われるくらいだ。
結局、二人は添い遂げることなく、男は札幌に去ってゆく。

以上、健サン映画のマイ・ベストスリーでした。

ほかに印象に残った作品にもふれておこう。
第4位の「新幹線大爆破」(1975年)では
健サンは新幹線の車両に爆弾を仕掛けるテロリスト。
2時間半に及ぶ大作は映画のデキもよかったのに
諸処の事情が絡んで興行的には不発に終わる。
その代わり、大幅にカットされた仏語吹き替え版がフランスでヒットした。
監督は「君よ憤怒の河を渉れ」に続いて佐藤純也。

第9位の「三百六十五夜」(1962年)は
上原謙・高峰秀子・山根寿子のトリオで撮られた1948年版のリメイク。
キャストは高倉健・美空ひばり・朝丘雪路に替わった。
どちらもけんサンであるところが奇遇。
監督も市川崑から渡辺邦男へ。

同名主題歌を歌ったのは1948年版が霧島昇・松原操のご夫婦。
当版ではもちろん美空ひばりだ。
ストーリーは二人の女性に愛された男が本命と結ばれるというもの。
結婚相手はひばりではなく雪路であった。

 ♪ みどりの風に おくれ毛が
  やさしくゆれた 恋の夜
  初めて逢(お)うた あの夜の君が
  今は生命(いのち)を 賭ける君 ♪
        (作詞:西條八十)

ちなみに作曲は古賀政男、まさにゴールデンコンビである。
さすがに詞も曲もすばらしい。
ただし、同じ古賀政男作曲(作詞は佐藤惣之助)の
「緑の地平線」と混同されることも多い。
原因は1番冒頭の ”みどりの風に おくれ毛が” であることは言うまでもない。
一方の「緑の地平線」では曲の一番最後(3番)まで来てやっと
”緑うれしや地平線” が登場するのだから、さもありなん。

健サンは今ごろきっと、天国で緑の風に吹かれているに違いない。
巨星は星の彼方に消えてしまった。

=おしまい=