2015年4月1日水曜日

第1067話 五反田でレバカツを (その3)

確証がないから単なる自称に過ぎないかもしれないが
元祖レモンサワーの飲み屋、焼きとん「ばん」にM鷹サンと二人。
小さめジョッキの生ビールに見切りをつけ、
くだんの元祖をいただくことにした。
即座に相席のリーマンたちが追随してくる。

われわれはといえば、
彼らが突ついていたレバ焼きが旨そうだったので
今度はこちらが追随のお返しである。
品書きにはレバ半ゴロとあった。
どことなくヤクザな名を持つ一品。

はたして「ばん」のレモンサワーは
半割りの生レモンを自分でスクイーズするタイプだった。
これなら不味いわけがなかろう。
かといって格別の美味というのでもない。
まっ、アベレージのちょいと上程度かな。

サワーを追いかけてきたレバーは
チョイ焼きもいいところで純生度95%といった感じ。
これには相方がギヴアップ宣言である。
そうだよなァ、J.C.にとってもかなりキビしいものがあった。

店内はさらに混雑度を増してきて
とてもとても焼直しを命ずる勇気なんぞ湧いてこない。
ここは一番、目をつむって一人頑張った。

レバーの仇はレバーで討て!
そんな思いにかられ、
さらに注文したのがサブタイトルにもあるレバカツである。
レバーに蹂躙(じゅうりん)されたM鷹サンは
いわしの丸干しなんぞに逃げの一手を打っている。
人間、一敗地にまみれるとどこまでも消極的になるものだ。

ところが、ところがですヨ、このレバカツ野郎が当たりやがった!
レバカツとなれば、東京は銀座の先の築地、
そのまた先で勝どきのお隣りの月島、そこの名物がレバフライだ。
月島はもんじゃだけじゃないんじゃ!

驚くなかれ、「ばん」のレバカツは月島のソレを超えていた。
しかも月島スタイルにならって薄切りカツの一辺に串が打たれ、
小旗仕立てになってるじゃないの。
駅伝走者の激走を激励する読売新聞の紙旗みたいに―。
ただし、ウェイトレス・フロム・チャイナに
カラシを頼んだら焼きとんのカシラが来ちゃったけどネ。

それは笑い話として
レバ半ゴロにゃ白旗を掲げた相方・M鷹サンがここで目覚めた。
ふと気がつくと、小旗にかぶりついているではないの。
唇の周りがウスターソースで汚れてるぞなもし。
”泣いたカラスがもう笑う”とはこのことで
その一部始終を目の当たりにしたJ.C.は
”開いた口がふさがらない症候群”に見舞われておりましたとサ。
やれやれ、マイッたぞなもし。

=おしまい=

「ばん」
 東京都品川区東五反田1-12-9
 03-3473-8080