2015年4月2日木曜日

第1068話 花冷えに見舞われて (その1)

昨夜・・・。
振り返れば、ついさっきのように思えるが小さな花見の宴ありき。
プレイボール(一応、宴=ボールにかけてマス)は18時半だった。
午後からずっと吹いていた北風が雨雲を運んできたのだろう、
おりしも降り出した小雨に身は震える、肩先は濡れる。
今朝の快晴が嘘みたい。

集合場所は都内屈指の桜の名所、播磨坂。
花見スポットとしては
マイ・ベストスリーにランクインの美しい桜並木が連なっている。
そもそも恩賜上野公園、浅草の隅田公園、
はたまた王子の飛鳥山などは人がワンサカ集まり、
酔客の奇声飛び交う人混みにして好まぬ、いや、むしろ嫌いだ。

ただし上野公園に限り、お山の上はともかくも山下の不忍池は気に入り。
皇居を取り囲むお濠を別とすれば、
山手線の内側の都心で池らしい池はここしかない。
花影映す水面にたわむれる水鳥を眺めながら飲む酒のうまさよ。
酒呑みでよかった。
まことに大きなお世話ながら、
下戸の人たちに寄せる同情の思い禁じえぬ池のほとりである。

茗荷谷・播磨坂、不動前・かむろ坂、早稲田・面影橋、
佃島・隅田川テラス、都内ではそんな場所が好きだ。
九段・千鳥ケ淵ももちろんけっこうだが近年、人が増えすぎた。
1966年、日本武道館におけるビートルズ公演の直前。
中学三年生だったJ.C.は当時のGFと下見を兼ねて界隈を散策した。
そのときの人出は今の5分の1にも満たなかったのではなかろうか。
あゝ、過ぎ去りし東京よ、帰りこぬ青春よ!

花冷えに見舞われた昨夜の花の宴は盛り上がらぬままに終演、
もとい、終焉、再びもとい、終宴した。

およそ10日前、上野は不忍池の端にいた。
在米時代からの旧友、ママさんN美と数ヶ月ぶりの再会である。
千葉県の内房からやって来る相方の便宜を考慮して
待ち合わせたのは上野松坂屋食品売り場。
時期的に花見には早いけれど、
上野の山ではすでに桜が開花したという情報あり。
半信半疑で行ってみると、懸念したとおり、
咲いていたのは早咲きのオオヒガンザクラだった。

デパ地下で調達したワインと前菜をぶら下げたまま、
山上に身の置きどころを探したものの、適当なスポットが見つからない。
結局は薬局、清水観音堂から石段を降り、
弁財天の脇をすり抜けて不忍池にやって来た。

この時点でチョイスは二つ。
その1・・・池にボートを出し、水上で宴
その2・・・池のほとりのベンチにて宴

こちらは水上を主張したものの、寒気に怖気づいた相方はベンチを選択。
こりゃしゃあないわ、引き下がるしかないわいな。
人影まばらにして空席だらけのベンチに並んで座る。
ニューヨークで一緒によく飲んだ北イタリアはピエモンテの銘醸ワイン、
バルバレスコをおもむろに抜栓したのでした。

=つづく=