2015年5月21日木曜日

第1103話 何処よりも此処を愛す (その7)

失礼ながら日本全国47都道府県にあって
人口の一番少ないのが鳥取県。
いや、古い知識だから最近は変化があったかもしれない。
が、おそらくそのままであろう。

わが友人・知人で鳥取県の出身者は
「美家古」に今、同席しているN村サンと
現在も金融界の第一線で活躍中のF岡サン、
このお二人しか思い浮かばない。
たまたまF岡サンとは昨日、メールのやり取りがあった。
話題ははるか昔の混声デュオ、Kとブルンネン。
ヒデとロザンナの焼き直し感否めずのカップルといえども
いや、とても懐かしかったぞなもし。

それはそれとして「弁天山美家古」である。
実はその日の数週間前、N村サンにごちそうになった。
ところは池袋の鮨屋では人気ナンバーワンの「K寿司」。
噂に聞いてはいたものの、初訪問だった。

待合室に順番待ちの衆があふれているのに
つけ場で酒をだらだらと飲み続け、声高にくっちゃべる客多く、
印象はけっしてよいものではなかった。
そんな状態を放置している店の姿勢もよくない。

肝心のサカナたちだが、品揃え豊富にして質もそこそこ。
ただ、生モノを包丁でさばくだけの海鮮寿司屋に過ぎず、
江戸前シゴトの対極にあることは事実。
わさびだって”生”なんかこれっぽっちも使っていない。
そこでお返しの意味も含め、今回の「美家古」同伴と相成ったわけだ。

N村サンは下戸ながら完全下戸ではない。
ビール中瓶1本くらいは何とか頑張れる。
よって再会を祝し、華々しく乾杯!
ただし、かような雰囲気の鮨店は尻の座りが悪いのか
どことなくソワソワしている。

とにもかくにも食べ始めなけりゃ始まらない。
彼には、にぎり17カンと巻モノからなる美家古コースを―。
J.C.はお好みで軽くゆくつもり。
美家古コースであれば
仕込まれた鮨種のほぼすべてを堪能できるハズ。
それをあてがって・・・と言ったら失礼だが
酒をたしなまぬ向きにはこの選択こそがベストなのだ。

突き出しは北寄貝のヒモ&ハシラの酢の物。
このスターターは十数年前からずっと変わらない。
コレだけでビール1本が飲み干された。

すでに6カンほど食べ進んだN村サンを尻目に
こちらもにぎりのスタートだ。
皮切りは平目の昆布〆、ほかの種から始めることはまずない。
常に安定した美味が舌の上で遠慮がちに拡がる。
この繊細さが平目のいいところ。
江戸前鮨においては白身のキングが真鯛だとしたら
クイーンは平目で衆目の一致をみるだろう。

=つづく=